トム・ロブ・スミス『グラーグ57』

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

相変わらずジャケットセンスいいわー。
前作に引き続きタイトルが作中に出た瞬間(タイトルが意味するものが分かった瞬間)の「キターーーー!」感は凄い。そして後半に入ってのアクション小説もしくはサバイバル小説かと思うような怒涛の展開にはゾクゾクした。
これまた前作同様時代設定や題材的には決して読みやすいものではないはずなのに、でもサクサク読めてしまう。この読みやすさは何なんだろうか。
・・・と考えながら読んでいたのですが、途中で気付いた。
レオって、ジャック・バウアーみたいじゃん、と。
今作なんて妻と娘たちへの愛情表現の不器用さに、潜入に拷問に(他にも共通点はいっぱいあるけどネタバレになるんで)・・・時間こそ年単位の物語なもののまるでジャック。つまりこれはソ連版「24」じゃないかと。
そこに思い至ったら視界がパァっと晴れたように、この読みやすさが腑に落ちました。
前作は物語の構成や展開そのものに魅力を感じたんだけど、今作はその上レオ=ジャックだと思ったら一気にレオを始めその妻と娘達、今作で鍵となるフラエラやマリシュ、果てはパン屋のオッサンまでもが魅力的に見えてきて、前作を客観的に見て楽しんだとするならば今作は主観的に見て楽しんだというか、また違う景色が見えて非常にいい読書時間を過ごせました。これ今この状態で前作を読み直したら更に違う景色が見えてくるんだろうなー。
でもネステロフが・・・・・・・・・・・・・・・(この気持ちもまた24のキャラに対するソレと同一)。