『戦国ブログ型朗読劇 SAMURAI.com 叢雲−MURAKUMO−』@浅草公会堂

公式サイト→http://samurai-blog.com/ の『時は戦国・・・各地で武将たちは「ブログ」を「武器」に日夜戦いに明け暮れていた。・・・が、実は「ブログ」を綴っているのは主君想いの祐筆(ゴーストライター)たち。』って、ここだけ見るとアホ企画としか思えなかったんだけど(笑)、予想に反してドシリアスってかド真面目な舞台でした。所謂イケメン俳優による朗読劇は何度か見たことがあるのですが、どうしてもやっぱり“読んでる”だけなんで台本がつまらないと結構苦痛だったりするんだけど、今回はさすが「声」で演じることが本職の方々だけあって観客を引きこむ力がハンパなく、イベントには付き物の“生アフレコ”とは違い画(映像)がない分演じる役をその場でダイレクトに声と音だけで伝えなければならないので、演技力としての表現はもちろんのこと声音の使い方とか声量の変え方とか純粋に技術的なものもすごいし、動きがないのに、いや、動きがないからこそその『心情』がダイレクトに伝わってきて、いやー凄かったわぁ。ゆーきゃん演じる大谷吉継がその命を終えて暗がりの中スッと立って舞台上から退場し、そして最後に一人ぽつんと残された杉田演じる石田三成が打ち首からの晒し首となり退場した瞬間、周囲から一斉にズビビビビビーっと鼻すすり上げる音が聞こえたぐらいの吸引力(笑)。面白かったというよりも極上の時間を過ごすことができて幸せいっぱい胸いっぱいでした。


あの迫力や濃密な空気感を文字として伝えるのは絶対に不可能ではありますが、以下は内容に触れてます。BD発売が決まってるんでネタバレ回避の方はご注意を!!。




舞台上には青みがかった紗幕が下がり、その向こうに和装姿のいっちー(市瀬秀和さん)の姿が見えたところで開幕。いっちーが手にした刀で紗幕を切り裂くと(昼の回では幕を斬る前に何太刀かあったんだけど、夜の回ではいきなり斬ってました)舞台前方にノートパソコンが乗った5つのテーブルと椅子、その背後に和楽器がセットされてます。
WASABIさんの演奏が始まりいっちーは静かに自分の机に向かい、それと同時に安元洋貴さんと松岡禎丞くんが登場。もちろんいっちー同様お二人も和装でございますが、安元さんがノーーーーー眼鏡!!!!!しかも普段と分け目が逆かつ若干盛り気味のスタイリングで、でも和装!!ノー眼鏡和装!!!。基本眼鏡好きではありますが、眼鏡姿しか拝んだことがないので逆に新鮮!逆に興奮!!(笑)。
で、当然中村悠一さん&杉田智和さんも和装であろうことはこの時点で分かってるわけですが、いやぁ・・・・・・・・・・・・この二人の登場シーンには度肝抜かれたね。
まずね、どっから出てくるのかと思ったら舞台中央のセリで上がってきたもんだからビックリしたんだけどw、上がってきた二人のポーズがですね、朱色の着物を着た杉田は客席に背を向け仁王立ち、黒地に赤の模様が入った着物を着たゆーきゃんはその足元で腰を落とし(膝をつき)黒い扇子で顔をちょっと隠すようにしてるわけですよ。なにこのキメッキメポーズ(笑)。セリで上がってくるから最初は杉田の姿しか見えないわけじゃない?安元さんたちは普通に登場したのに杉田はセリ使って登場ってwつーか背中向けてるしwwwってな感じでこの時点でもうざわつく会場だったんだけど、その足元に超キメッキメのゆーきゃんがいたもんだからその姿が見えた瞬間会場中がものすごい「・・・・・・・・・・・・ざわっ!!!!!」としたよね(笑)。
イベントなんかではもっとこう・・・・・・恥ずかしい登場の仕方もあるんだけど、でもアニメとかゲームのイベントならば世界観は予め分かってるわけだから心の準備みたいなものは出来てるわけじゃないですか。というよりもそれを期待していくわけだし。でもこれはどういう感じになるのか全く分からない状態でソレだったんで、ものすっごい驚いたし異様に興奮した(笑)。背中で語る赤い杉田と扇子片手に不敵な笑みを浮かべる黒いゆーきゃんの図に猛烈に興奮したわ(笑)。
てか杉田前髪どうした(笑)。なんかミリ単位ぐらいの長さしかない前髪だったんだけど、それで朱色の上下だからまるでアホの子みたいで・・・・・・(笑)。
ゆーきゃんは昼回はおもいっきりヒゲ面でそれはそれで悪くなかったんだけど、夜回はヒゲ剃っててこの作品の大谷吉継ならばむしろ剃ってた方が正解かなと思ってたんだけど、でもカテコで普通にヒゲ生えてることに気付いてやや呆然としてしまいました。2時間の間にそない伸びたんかい!?と(笑)。あれ?ヒゲ剃ってたのは見間違いかな・・・・・・?(笑)。
ちなみにいっちーは紫地に金糸で刺繍が入った着物で(2幕冒頭で剣技をやるんでいっちーだけ袴はそれ仕様)、松岡くんは水色地に金糸の刺繍、安元さんは茶色のお着物で、舞台の後方に5人の家紋が染められた大きなのぼりがそれぞれの背後に立てられていて、その上部のラインと着物の色が同じなんでイメージカラー的なものだったのかな?。
画像は大きくならないようですが、いっちーのブログに集合写真がアップされてます→http://ichinose.freemo-blog.com/?day=20120213
ドセンのイケメンさんは打楽器(鳴物)の美鵬直三朗さんと仰る方で、イケメンで言うなれば金子あっくん、サッカーで言うなれば鈴木啓太系のイケメンさんでちょっとときめいたw。
上手からいっちーの直江兼続上杉景勝ブログ担当)、安元さんの片倉小十郎伊達政宗ブログ担当)、ゆーきゃんの大谷吉継羽柴秀吉ブログ担当)、杉田の石田三成(同じく秀吉ブログ担当)、松岡くんの森蘭丸(2幕はその弟・忠政)(織田信長ブログ担当)という順で、ゆーきゃんを中心に舞台前方に向かってV字フォーメーション。
台本を持つ安元さんの手がちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお綺麗でぶっ倒れるかと思いました。昼回は上手サイドブロックだったので角度的にちょうど安元さんの手元がよく見えたんだけど、そういうつもりじゃないのに(そこまでしっかりチェックするつもりじゃなかったのに)目に入った手が綺麗すぎて全力で釘付け。身体大きいし声も低音だからゴツゴツと節くれだった男っぽい手をイメージしてたんだけど、真逆も真逆、指がスッと長くてしなやかな手で、台本を持つ手つきがまさに『繊細』という表現がハマリすぎるもんでノー眼鏡和装と合わせて全力でハァハァですよもう!。しかも演るのが小十郎ってどうするよこれ!?(笑)。
・・・って思ってたらいきなりイイ声で「戦国なう!」とか「打ち首なう!」とか言いだしてしろめった(笑)。
杉田三成も「ワラワラ」とか言ってるし、ていうか自分のこと「ミッチーです(ザ・杉田調で)」とか言ってるしw、他人のブログをハッキングして変えたパスワードが「52035203」でその意味はというと“ポケベル入力で「ニンニン」(ポケベルでは52と打つと「に」で03で「ん」と入力されるから)だとか、誰々は「食べログ」(食べ物ブログ)しかアップしねーだとか言ってるんでああやっぱりネタ系の脚本なのかなーと思ったんだけど、でも笑いがあるのは序盤だけで、特に1幕の終盤からはブログというアイテムの存在が“過去のもの”というか、そんなものは抜きにして関が原の戦いに突入するのね。もうガチもガチ、ものすごい熱量でもってゆーきゃんの大谷吉継と杉田の石田三成が笑い一切なしで切ないまでの友情物語を繰り広げるわけですよ。だもんで気がついたら・・・ていうかちょっと寝てる間に(笑)ドシリアスになってて最初はちょっと戸惑いました。終わってみるとこの「戦国なう」ってのはそういうやりとりを交わしていた平和な日々(平和な戦い)があってこそのこの大谷吉継石田三成の最期なんだなーと思えるわけですが、でも見てる間はちょっぴり「『ブログ型朗読劇』のはずなのにブログの存在なかったことになってね?^^」とは思ったw。
大谷吉継石田三成の切ないまでの友情物語と書きましたが、話自体はそこに焦点がビシっとあっていて、小十郎と兼続はチャットという形で“外野目線”として二人を語り、蘭丸はナレーション担当ってな感じ。だもんで読む量としてはゆーきゃん&杉田が7割。
元来の性質としては陽の吉継と陰の三成・・・なのかなぁ?確か吉継が三成を「ヒッキー」と表現したと思うんだけど、基本インドアな三成を何くれと面倒見てやる吉継ってな関係性で、まぁ・・・・・・ホイホイな感じですよねw。でも吉継が“腐り病”にかかってしまい、時を同じくして主君・秀吉もまた病にかかってしまったもんで、元々ネガティブで抱え込みがちな性質なのに背負うものが多すぎたんじゃないかなぁ?三成は小十郎&兼続曰く「人が変わってしまった」のね。そんな三成に顔が溶けて(・・・)目も見えなくなった吉継は「痩せたな」って言うわけですよ。三成が「見えるのか?」と聞くと、「見えん。だが分かる」と返すわけですよ!!。なにこの絶妙な距離感!!。そして対人スキルが絶望的なまでにない三成なので秀吉の死後あらゆる方面から命を狙われることになるんだけど、吉継は残り少ない自分の命を三成のために使おうとするのね。軍師として関が原の戦いに臨み、次々と味方に裏切られいよいよ負ける・・・となると「内府(徳川家康)を頼れ」と今後のことを指示し、そして自分は三成を逃がすために身を挺して時間稼ぎをするわけですよ。そして潔く死ぬ。大谷吉継美味しすぎんだろオイ!。
で、声業界新参中の新参なわたしは「何役っぽい感じ」と表現できないんだけど(合戦シーンはハムさんっぽかったかなー)ゆーきゃんの声はやや低めかつ太めな感じで、それプラス前半は穏やかで常に笑みを湛えているような柔らかさがあり、関が原の戦いに挑むべく「兵を上げろ!」と高らかに宣言してからはキリっとビシっと凛々しくそして硬質な感じになるのね。その演じわけが脚本含めなんかもう・・・わかりすぎてて辛い><。張り詰めた空気を切り裂くような声圧で、ダイレクトに身体を貫くような迫力で、でもこれだけ声張ってるのに一音一音がハッキリ聞こえてハンパない熱量だった。
一方の杉田は脆さをはらんだナイーブボイスで、こっちもまたあらゆる意味でわかりすぎててだなー!!(←思い出すとなんか腹たってきたw)。
てか仲良しだからってのが理由なのかはわかりませんが、この二人の「間」が凄まじいまでのフィット感なのね。アホ会話の間にもゆったりとした会話の間にも畳み掛けるように交わされる会話の間にも吉継と三成の・・・・・・ベタな語彙しかないのでこの言葉を使いますが「絆」が見えて、そうなの!二人の姿、二人の生き様が『見える』ようだったの。ほんとに凄い空間だった。
俳優の場合朗読劇と言ってもどうしても表情で表現してしまいがちだと思うのだけど、この舞台ではみんなほとんど表情を変えず声音と声量だけで表現しててそこもまた凄いなと思ったんだけど、それでも杉田だけは頭上を仰いでみたり眉間に皺寄せたりとそういう表現方法も使ってたのね。で、4人が舞台から去り一人残された杉田三成は最期の瞬間幼い頃に吉継と交わした「泣くな、三成」「吉継、泣いてはおらん」という会話を思い出しながら「吉継・・・泣いてはおらん」と呟くんだけど、その時の杉田ってば胸(ってか胃の辺りw)に置いた手をぶるっぶる震わせてて、それはグッときたわぁ。
てか「武将」であることをイメージしてだと思うのですが、4人は足を結構大きく広げて雄雄しい感じで腰掛けているのに対して杉田だけは足の間隔が狭いし(むしろ内股と言ってもいいぐらい)、小十郎&兼続パートでは台本を膝付近まで下ろした状態で追っているから4人と比べると背中が丸まっちゃってて、座り方も演出の一つだとしたら多分もうちょい足を広げ背筋を伸ばすべきだったのでしょうが、でも三成のキャラと相まってなんかものすっごく・・・・・・・・・守ってあげたい杉田でクソクソッ(←思い出すととても腹たってきたw)。
あーでも夜の回で一度盛大に間違えた(噛んだ)ところがあったんだけど、そこですかさず「がんばれー」って声が掛かるのはどうかと思ったわ・・・。確かに応援してやりたくなる感じだったけど!でも朗読劇でああいうのはほんとやめて欲しい。今後こういう企画が定着するといいなーって心から思うのですが、それと同時に観客もいろいろと弁えないとな・・・。
松岡くんはコレといった“蘭丸らしいエピソード”とかはなかったもんで蘭丸としての印象はあまり残ってないのですが、とても聞きやすい声質で、いい意味で吉継と三成の物語を邪魔してなかった。
いっちーの兼続はわたしがイメージする兼続とは違ってシニカルな感じで、こういう声音を聞いたことがないので新鮮でした。てかいっちーの見せ場は間違いなく2幕冒頭の剣技だったんだけど、まさかこの舞台でいっちーの殺陣が見られるだなんて思ってなかったんでなんだか得した気分だったw。
安元さんの小十郎は「政宗は俺がいないとダメだから」とか言うので昼回と夜回の間でお友達に「政宗は誰かなー?」と振ったら「達とか?」と言われたもんだから、夜回では小十郎の台詞の向こうで達央さん政宗の幻聴が聞こえて大変でした(笑)。


最初にも書いたけど、ほんっとーーーーーーーーーーーーーーーーに極上の時間でした。「声」と「音」だけで作られたこれほどまでの密度と濃度が濃く熱量が高い空間ってのは初めての体験だったので、未だに興奮が醒めません。これ本命の人が出てたらと思うとおかしくなるよ(笑)。