三羽 章吾『Junk』

Junk

Junk

帯に『社会の本流から外れた人間たちの哀しくも愛らしい真剣な姿を描く』とあるのですが、ほんとそう!。この本には「指」と「飯」とタイトルが付けられた2篇が収録されているのですが、両方とも所謂“犯罪者”を描いてるのね。もしくは駄目人間。どんな理由があるにせよ、犯罪を犯したものは悪人に決まってる。駄目人間は間違いなく自分自身に問題がある。そこに同情やら共感やらする余地は本来ならばないはず。それなのになぜか応援したくなってしまう。なぜか悪人たちが、駄目人間が好きだと思ってしまうのです。
その理由は一重に三羽さんが登場人物たちに『愛』を注いでいるからだと思う。みんな『愛らしい』んですよ。この本に限らず三羽さんの作品はとにかくみんな愛らしいの。生きることに精一杯で、真剣で、でも不器用だから上手くいかなくて、そんな人間たちが不器用ながらも誰かと関わり、繋がり、必死でもがく姿が愛おしくてたまらない。彼らの姿を見てると(読んでると)、世の中いいことなんて滅多にないけれどそれでもできる限り頑張って生きていけばそのうちちょっとはいいことがあるかもしれないなーと思わせてくれるのです。
三羽さんの作品を読めることは私にとって生きる糧の一つです。