津原 泰水『11 eleven』

11 eleven

11 eleven

舞台となる時代も描かれているテーマも語り口も全く違うものばかりで、津原さんから紡ぎ出される物語の多彩っぷりに眩暈がしそうでした(イメージ的に「彩」という字は相応しくないように思うので、『多暗』という文字を充てたいところですが)。
でもそれでいて一冊の本として統一感はあるんだよなぁ。そんな単純ではないのだけど“美と醜”“彼岸と此岸”の境界がややずれていてなんだか酩酊する感じ、というか、ゆっくりと足元がずぶずぶと沈んでいくようで、でもそれは決して不快でも不安でもなくて、それどころかちょっと悦びを感じてしまう。美しい文章には魔力があるんだよね。