- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/09/07
- メディア: 単行本
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というわけで、日の光をタップリ浴びて毎日過ごせるような暮らしをしていない社会的弱者・・・とはちょっと違うんだけど、まぁ確実に年金やら保険料やらは納めてないよね!ってな人達や罪を抱えて生きる人達が多視点で描かれ、それらが細い糸で繋がり、やがて一本の太い縄となり到底倒すことは不可能と思われていたボス猿を倒すってな物語なのですが、とにかく上手い。これまでに数作読んだ吉田作品は限られた人数の中で濃厚で密接な人間関係が描かれているという印象なので主要人物が10人以上いる今作は3分の1あたりまではどうにもこうにも落ち着かないというか、読み心地の悪さを覚えてたんですが、 純平と夕子が繋がったあたりから物語にものすごいうねりが生まれ、あれよあれよという間に事が運んで最終的に表舞台に立つ流れはまさしく怒涛の展開。歌舞伎町(東京)が主舞台だった前半はともかく秋田に舞台を移した後半ははっきり言ってかなり強引だと思うんだけど、その過程で謎の書類の存在やら占い師のお告げやら、“胡散臭さ”を加えることでそういう世界なんだと思わせられてしまうのです。ここいらへんはほんと上手い。
そして登場人物がどいつもこいつも魅力的で、乳児から100歳間近のお祖母ちゃんまで相当幅広い年齢の人間を描いているのですが、誰もがとにかく魅力的で、どのくらいかっつったらもう腹立つぐらい(笑)。はっきりとした犯罪行為を犯してる人もいるし、最初に書いたように真っ当な暮らしをしてない人もいるんだけど、それでもちゃんと人間やってるんだなと思える。もちろん真っ当に生きてる脇役の人達もみんな。これだけの多人数が生きる姿を描けるってすごい。