岸田 るり子『白椿はなぜ散った』

白椿はなぜ散った

白椿はなぜ散った

冴えない少年がフランス人の母と日本人の父の間に生まれた赤い髪でグレーの瞳の少女に偏執的な愛情を抱き、それがやがて奇妙な三角関係に発展し、そして10年後、彼らの残したものが余命僅かの一人の作家とその恋人を事件に巻き込むことに・・・という物語で、本来ならばなんの関係もない二つの時間が一つのアイテムによって繋がり、恋人に掛けられた容疑をはらすべく第三者的存在の女性によって10年前の愛憎劇の真相と、現代で起きた殺人事件が明らかになるという昼ドラと2サスを一度で味わえるようなお徳感がありました。
私の中で岸田さんは所謂「厭系」に属する作家さんで女のドス黒さを描くのは上手い人だという認識があるのですが、女性だけでなく男性のエゴというか執着心(フェチズム)を描くのも上手いんだな。さして特別な描写がなされているわけではないのですが、なんか気持ち悪い。そしてそれが単なるフェチではなくその後の伏線になってるのに感心しました。