深谷 忠記『無罪』

無罪

無罪

刑法第39条をテーマにシンナー中毒者に幼い息子と妻を殺された男、精神を患い二人の子供を手にかけた結果無罪となった女、その元義母、現在の夫、それぞれの“その後”を描いた作品です。
作中で家族を殺された男が言及しますが、このテーマって結局「関係者になってみなきゃ分からない」んだろうなぁと。一応自分なりの意見は持っていても、実際にどちらの側であれ関係者となったらそれは180度変わるかもしれない。だからとにかく直接でも間接でも、そうならないようにと祈るだけ・・・だよなぁと思う。
それはそうとして、作品としては誰もがひたすら思い悩み苦しむ様が描かれているだけなので読んでいて鬱々とした気持ちになりました。一応前向き、というか、それこそ「それでも生きていく」エンドではあるもののドラマのような“明日”があるわけではないし。でもきっとそういうものなのだろう。一度関係者になってしまったらもう普通には暮らせない。だけどどんな明日であっても明日はくる。そういうことなのだと思う。