花村 萬月『アイドルワイルド!』

アイドルワイルド!

アイドルワイルド!

人は誰でも必ずいつか死ぬ。それはどんな偉い人でもどんな素敵な人でもどんなブスでも貧乏人でも平等に訪れる事実。そんなことは分かりきったことだけど、それでも“自分にだけは明日が必ず来る”と信じきってるのが“普通の人”。
この物語はシバ神に例えられる禍々しいまでの超絶美形の破壊神が自称“ごく普通の女”と旅をする愛欲と刹那のロードムービー(風小説)なのですが、どっからどう見てもどう考えても普通じゃない、人間ですらないのでは?と思わせるほどの存在であってもそういう意味では普通の人と同じなのかなーなんて思った。
ていうか、女は強い。作中で折にふれその切り替えの速さは描写されていましたが、あまりのオチに笑ってしまいました(笑)。
それと同時に、かつての花村萬月を思うとこの救いであり前向きな結末にはちょっと不思議な気持ちになりました。暫く読んでなかったんだけど、もしかして最近はこういう作風なのか?。


ところで、色気ありまくりの男と普通の女が車で旅をすると聞くと、私は南朋さんとしのぶ姉さんによる「ヴァイヴレーター」を思い出すのですが、芥川賞を取り立嗣監督が撮ったゲルマニウムの夜も美形設定の主人公が新井浩文だったし、わたしの中で花村作品に登場する美形は造詣の美しさよりも圧倒的な色気、抗えない色気の持ち主として脳内変換されてしまいがちです。が、さすがにこの伊禮ジョーという男は無理でした(笑)。むしろ南朋さんや新井浩文をキャスティングするならば、北海道で出会った“顔のない夫婦”の旦那、だな。