鏑木 蓮『救命拒否』

救命拒否

救命拒否

トリアージ」という行為を鍵として、2年前に起きた死傷事故の真相と、それが現在捜査してる事件とどう結びついているのかを第三者である警察の視点で描いた物語です。
冒頭の事件シーンからトリアージ(ブラッグ・タグ)というキーワードを出す掴みがなかなか良くて一気に引き込まれました。医療モノかと思いきや刑事モノであることにやや戸惑いましたが、そのブレが現在の事件の不透明さを助長してて上手いなと思った。
後半は王道の刑事モノになるのですが、オッサン刑事と若手刑事というこれまた王道コンビに加えて曰くがある指南役というスパイスが効いててこれまた上手いんですよ。物語(事件)自体は救いようがないというか誰も悪くないだけに怒りや悲しみのもって行き場がなくて辛いものなのですが、その遣る瀬無さをクセはあるけどデカとしても人としても“いい人”なオッサン刑事と若手刑事のやりとりが程よく中和してるのです。笑っちゃうぐらいいいオッサンだもんでちょっと劇画的とすら感じる面は否めませんが、でも繰り返すけど扱う事件が事件な上に警察の権力争いとか派閥争いとか行き過ぎた単独捜査とか、その手の要素まで加わっちゃうとさすがに重過ぎるんで、結果としてこれでよかったと思う。
当初鍵を握ると見られていた人物がある時点からほとんど消えてしまっていることが気になっていたのですが、ちゃんと回収されたどころか忘れてたネタまでしっかり拾われていて、その後味の悪さを含めて好みの読後感でした。