中村 ふみ『裏閻魔』

裏閻魔

裏閻魔

日本を中心に優れたエンタテインメントストーリーを世界に向けて発信するための国際的エンタテインメント小説アワードというなんかよくわからない『ゴールデン・エレファント賞』なるものの第一回大賞受賞作品です。電子配信はされるわアジア圏の各国語版での出版も決まってるわってんで、期待せずどころか半笑いで手にとったわけですが、すいませんでしたーーーーーーー!とスライディング土下座いたします。
これ、すっごく面白かったです!!!。幕末から明治にかけてが舞台で、使えない人斬りの男が新選組に潜入することを命じられ、バレて殺されそうになってるところを天才的な彫り師に拾われ「鬼込め」という禁術を施される・・・ってな話なんですが、主人公もヒロインも、主人公の協力者である警察のエライ人(金持ち)も、そして主人公の永遠のライバルも、登場人物全てがキャラ立ちしてるのね。特に主人公とライバルが素晴らしい。もちろん美形だし(笑)。
何が一番燃えた、いや萌えたかって主人公とライバルが抱える葛藤で、劇中でも「ヴァンパイア」という単語が1度だけ登場しますが一応“寿命”はあるものの二人のソレは普通の人間のソレとは全く違うものなので、愛する人たちと同じ時間を過ごすことはできないわけですよ。自分は姿形は変わらないのに大切な人は(外見上)年を重ねていく。周囲に対する関係(立場)も変わっていく。それを止めようと思えば止める力を持ちながらもそれを使わず、やがて来る別れに、大切な存在を失う恐怖を抱えながら生きる主人公がわたしの大っっっっっっ好きなドラマのドS眼鏡ヴァンパイアとモロ重なりで悶絶しまくりでした。
普通この手の話ってもっと壮大な時間の流れ、それこそ何百年単位の話であることが多いと思うのですが、これは主人公目線で固定されながらも共に生きるヒロインを描いたというか、ヒロインの一代記的な構図になっててそれも面白いと思った。あとなにげに主人公が師匠の彫り師から彫り物の技術とともに受け継いだ黒猫の存在が光ってる。全体的にとても「画的」な作品だなと感じました。間違いなくアニメ化されると思う。