ジェフリー・ディーヴァー『ロードサイド・クロス』

ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス

キネシクス専門家であるキャサリン・ダンスシリーズの第二弾です。
作中で使われるキネシクスとは、“事件関係者の聴取を行う中で話し方や身振り手振りを観察し、まずその人物のベースラインを見極め、そこから今語っていることが真実か虚偽か、何かを隠しているのか、などを判断する技術”と私は解釈しているのですが、ここんとこ立て続けにテレビドラマで同様のテーマを扱った作品を見ていたせいか具体的イメージはしやすかったけど、それでもやっぱり文字として描くには限界があるなーと思った。想像は可能だけど、読者としてはあくまでも“ダンスの目を通して”人物を見るしかなく、結局はダンス任せになっちゃうわけで、だから想像してもさして面白くはないから。あとやっぱりダンスにはアメリアほどの魅力がないんで、ダンスの目を通して見えるもの=ダンスの解釈がアメリアのそれほどすんなりとは受け入れられないってのも大きい。
事件は時事問題を扱う人気ブログに書かれた記事を元ネタにしたサイバーいじめが勃発し、名指しで非難された青年が復讐を始める・・・といったもので、そこにオンラインゲームやSNSが絡み、インターネット上で人々が無自覚に自分の情報を全世界に向けて公開することの恐ろしさといった現代ならではのアイテムや問題が上手いこと作中に織り込まれていて、まぁ若干今更な感じは否めないというか、現実、特に民族性なのかなんなのか、いじめの質では恐らくアメリカなんぞよりもはるかに陰湿な日本のネットを使ったいじめはこんなもんじゃねーぞ、なんて思いはしたけど、サクサク読めるし引き込む力はさすが。
ジェフリー・ディーヴァーと言えばラストのどんでん返しですが、犯人はさほど驚きはないけどこれだけサイバーネタで引っ張りながら動機それ!?というある意味ズッコケてしまうオチでして、これはこれでビックリ(笑)。


これはまぁ余談というか、今このタイミングで読んだからこそ感じたことですが、ブログとかツイッターとかそういう場で正義を掲げて主義主張を唱えたりいかに支援活動に勤しんでいるかをノリノリで報告したりしてる人が大勢いて、それ自体は決して悪いことでも間違っていることでもないと思うけど、そこで自分には何らかの力や権利があると過信した時点でそれは「正しいこと」ではなくなる・・・というか、上手く表現できないのですが、俺正義もいいけど線引き大事!と自戒しつつそんなことを思ったりしました。