篠田 真由美『燔祭の丘』

これまでの14冊をざっくりと読み返しつつ出来うる限りの心の準備をしてからようやく最後の1冊を開いたわけですが、読み終えて今思うことは、「とうとう終わってしまったなぁ」そして「長かったなぁ(笑)」に尽きる。講談社ノベルス大好きっこなんで当然のごとく「未明の家」を手にしたあの日から・・・16年!?まさかこんなにも長い間お付き合いすることになるとはねぇ。とにもかくにも京介と蒼と深春の物語が無事完結してよかった。桜井京介改め久遠アレクセイの物語が描かれたラスト2作ははっきり言って雰囲気勝負でしかなかったんだけど、最終的には収まるところに収まった、いい終わり方だと思う。篠田さん、そして京介を初めとする全ての登場人物に心からのお疲れ様を送りたい。そして16年間たくさんのときめきをありがとうと言いたいです。


以下、内容に触れてます。


知ってはいるけど、とにかくもうみんな京介が大好き!すぎる最終巻に笑い泣き(笑)。特に神代先生ガチじゃねーかよ!!ってな(笑)。
でもやっぱりこのシリーズの醍醐味は京介と蒼ですよ!。ようやく京介の元にたどり着けたものの、ほんのちょっとの言葉を交わしただけで蒼はいずこへと連れ去られてしまうのね。京介は当然後を追うよね。でもこの時京介は父親であるグレゴリにかけられた暗示(なのか?)によってどうしても瞼を開けることができない、つまり視界を奪われた状態なのです。そんな状態の京介はズタボロになりながらも必死で目的地である丘の上にたどり着き、そこでグレゴリの存在を感知、その命を自らの手で奪おうとする。・・・が、京介が伸ばした手が人らしきものに触れ、すると京介はその柔らかな感触から即それが誰か気付くのです。そう、それはグレゴリがアレクセイの手によって捧げさせるべく用意した生贄である蒼!。自らが何をしようとしていたのか、グレゴリが自分に何をさせようとしていたのか寸でのところで気付いた京介は蒼の口に巻かれていた布を取り除き「目を開けろと言ってくれ」と頼みます。そして蒼が「目を開けて、僕を見て!」と叫ぶと、それまでどうやっても開くことができなかった京介の目がぱちっと開き

「京介」
「うん――」
「やっと、会えたね」
「ああ、やっと」

なんだこれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!(大・興・奮)。
しかもこれ、京介はボロ布を身体に纏っただけのノーパン(注:私の想像です)で、伸びきった髪はボサボサで足は裸足で爪は割れ足の裏は見るも無残な状態で、蒼はというと手足を縛られ十字に磔!!!!!にされてる状態なわけですよ。
どうすんのこれ(笑)。
どんな仕組みで目が開かなかったのかサッパリ分かりませんが、「僕を見て!」という蒼の一言で開く京介の目ってばほんとにもう・・・・・・っ。
そんでさ、グレゴリの死によってついに久遠家の呪縛から解放されたかと思いきや、その後京介は意思疎通ができない、これまでに何度もそう形容されてきた「人形」になってしまうわけですよ。そんな京介を当然蒼は献身的に介護するわけですよ。
蒼に「あーん」されたりお風呂に入れてもらったりする京介・・・・・・ご、ごくりっ。
とか思ってたら実は京介はちょっと前に覚醒していて(え・・・?)、その状態を楽しんでたんだろ!と深春に言われると
「ばれたか」
って、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?。
もうやだなにこの人・・・・・・。
そして父親の残した負の遺産をどうにかすべく少なくとも2.3年は姿を隠すと“深春にだけ”言う京介。蒼に会って泣いて止められたら決心が鈍ってしまうから蒼には深春から伝えてくれとこれまで同様に酷い頼みを押し付ける京介。
でも、「戻ってくるんだろうな」という深春の問いにはこれまでとは違って「必ず戻ってくる」と『大輪の薔薇のような笑顔で』言うのです。
無理。そんなの想像できません。そんな京介想像できないよ。最後の最後にそんな顔を見せるだなんて罪な男すぎる。
ま、まぁ私は長い前髪の間から黒縁眼鏡ごしに不機嫌そうな顔をチラ見せする桜井京介の方が断然好きですけどもーーーーーーーーーーーー!。
京介と深春の関係性もよかったなぁ。神代さんや蒼のように「特別な何か」があるわけではないけれど、それなのにずっと京介の側に居続けた深春ってすごいよね。アレクセイが京介になるために、そして京介が京介でいるために一番必要だったのって実は深春なんじゃないかなと思う。全てが明らかになってみると京介にとって“普通の友人”がどれほど大きな存在だったか分かるもん。
そんな深春がある意味最大の勝ち組(笑)となってくれたのは本当に嬉しい。栗山深春という男はこの長い長い物語に出てきた誰よりも幸せになる権利と義務があると思っていたので、この結末はほんとーーーーーに嬉しいです。栗山家を蒼と京介が訪ねた時のことを想像するとニヤニヤが止まりません(笑)。
そう。シリーズは終わったものの、彼らのその先を想像できることが何よりも嬉しいんだよな。この先も彼らはずっと一生懸命に、でもこれまでよりは確実に穏やかな気持ちで生きていくんだろうなぁと思える終わり方だったことが本当に嬉しい。ていうか翳!!どれだけ先になってもいいから翳のその後を読みたいと私は切望します!!!。ってそんなこと言ってたらやっぱり京介のその後も読みたいし栗山家のホームドラマも読みたいしってキリがないんだけど(笑)。


最後にもう一度。
京介、深春、蒼、神代先生、これまでほんとうにありがとう。
篠田真由美さん、ほんとうにほんとうにお疲れさまでした。