舞城 王太郎『獣の樹』

獣の樹 (講談社ノベルス)

獣の樹 (講談社ノベルス)

成雄が出来るまでの物語としてはフムフムと読めたし、成雄と楡という少女のかなり歪だけど純粋(と描いてピュアと読む)な初恋物語としてはニヤニヤと読めましたが、馬から生まれた少年とか蛇の中の少女とか、あと牛男とか虎男とかもう・・・びっくり人間大集合なのに、キャラが薄く感じるってどういうこと(笑)。それに、西暁にありながら日本やらアメリカやらを相手にする壮大で壮絶な物語であるのに疾走感とかカッコよく言うとグルーブ感?、そういうのもあまり感じられなかったなぁ。これってつまり「俺は俺で、俺は俺だから」(某ドラマの白スーツ刑事の発言より)って話ですよね?世の中おかしなことになってるけどブレんな!俺は俺!ってことだと私は読んだのですが、設定は超絶ぶっ飛んでるんだけどどこか醒めててマトモで、それは舞城王太郎という作家の“成熟”と受け止めればいいのかなぁ。読み難さで言えば奈津川サーガの方が断然読み難いと思うんだけど、書かれてる内容を理解というか自分なりに咀嚼するのはこっちの方がはるかに時間がかかりました。地下室の仕組みとか納得するまで2時間ぐらいかかったし(笑)。私の想像力ももう限界なのかなぁ。