加藤 実秋『風が吹けば』

風が吹けば

風が吹けば

実体験なのかはたまた憧れ的なものなのか、それとも単純に好きだからなのか分かりませんが、80年代、それも「ツッパリ」と呼ばれる人種・文化に強い思い入れがあるんだろうなということはとてもよく伝わってきました。でも私は別段そういうものに思い入れはないので共感できるわけもなく、共感させるだけの“何か”があるわけでもなく、ひたすら作者が楽しんでいるだけにしか思えず・・・。
タイムスリップモノの醍醐味の一つである飛んだ先で主人公がその時代に馴染んでいく過程も荒いし、でも当時の服装や髪型やなんかの描写はこれでもかとばかりに詳細で、なによりも肝心の主人公が感じた『青春』の部分がさして描かれていないからタイムスリップ前後の成長というか変化もあの人が今はこんなになってる!という上辺のことだけにしか感じられないいし、結局読後残ったものといえばこの作者はツッパリ好きなんだろうなってことだけでした。
あ、でも久保田くんは全体を通してよかったです。久保田くんが主人公に対して言った一言はちょっとグッときた。