三羽 省吾『路地裏ビルヂング』

路地裏ビルヂング

路地裏ビルヂング

面白かったああああああああああああああああ!。路地裏にある古い雑居ビルが舞台で、そこに入っている多種多様なテナントで働く人々を描いたものなのですが、無条件で面白いと思える本に出会えるのってほんと幸せですよね!。
章ごとに各テナントの1名が視点となる形で進むのですが、それぞれの物語は視点人物の性別も年齢も職場環境も全く異なるので雰囲気や目先が変わって単独でも楽しめるし、その中で他のフロアに抱く感情やらそれまでに描かれたフロアで働く人々も登場したりするので、だんだんと群像劇になっていくわけです。普通だったら雑居ビルに同居してるとは言え業務上はほぼ接点がないわけだから、共有スペースで挨拶を交わしたりちょっとしたいざこざが起きる程度の関わりあいしかないもんですが、そこはこのビルの磁力なのかなんなのか、最終章に向けて一つになっていくわけです。それを引っ張るのが最初の章の視点となる兄ちゃんで、この兄ちゃんの成長物語というか成り上がり物語というか(笑)、そんな視点でも読めたりして、ほんっとに素晴らしい流れなのです!。苦い後味やイヤーな後味は決して嫌いじゃないけれど、こうやって登場人物がみんな笑って終わる物語はやっぱり気持ちがいいです。人との出会いって大事だし、やっぱりいいもんだよなーと思う。読んでて幸せを貰った気分。