五十嵐 貴久『交渉人・篭城』

交渉人・籠城

交渉人・籠城

タイトルがタイトルなので当然だとは思いますが、交渉人がいる(担当する)前提で犯行計画を立てる犯人が面白かったです(笑)。いや、面白がるような話ではないし、復讐のために少年法という壁をいかにして越えるかよく考えられた計画だとは思いますが、なんていうか、ちぐはぐ?な感じが面白かった。
シリーズ作品だし、「交渉人」の物語なので“この作品で”そこまで掘り下げる必要はないのでしょうが、読みながら事件の「中心」である少年の胸中まで描いてくれたらもっと凄い作品になったかもしれないなぁとか思ったりしました。リアルタイムで事件に触れていたにせよ後追いで事件のことを知るにせよ、カメラを通じて自分に対しこうまで激しい怒りをぶつけられた少年の気持ちを想像しようとしても出来ないんですよね。少年のパーソナリティに関する記述がほとんどないので。繰り返しますがこの物語の主人公は現在進行中の事件を治めるための交渉人なので、交渉に必要でないことまで描く必要はないのだとは思います。でもテレビジャパンという他作品にも登場する要素も絡ませているわけだし、テレビジャパン視点で犯人の少年を登場させることも出来たのではないかなー。