『小沢健二 コンサートツアー ひふみよ』@NHKホール

13年ぶり(わたしが実際に生小沢くんを見るのはレビュー96以来なので、わたしにとっては14年ぶり!)の小沢くんは、なんだか不思議な感じがしました。確実にあの頃とは変わってたんだけど、でも変わってないなーって感じる瞬間もいっぱいあって、もちろんわたし自身もあの頃とは全然変わってるはずで、だから「好き」の中身は違うんだけど、それでもわたしは今でもこんなに小沢くんのこと好きだったんだ!と思いました。13年の間小沢くんの曲を聴くことは多分そんなに多くはなかったのに(ipodには入ってるんで時折流れはするけれど)、ほとんどの曲を完璧に歌える自分に驚いたw。途中でそのことに気付いてちょっと動揺してしまったのですが、小沢くんが13年ぶりに歌う曲たちを聴きながら「懐かしい」とは感じなかったのです。つまりそれは過去になってないってことなんだと思う。自分ではそんなふうに思ってなかったんだけど、いまだわたしの中で小沢くんは現役でありつづけてたんだなって気付いて驚いてしまいました。
7時ちょい前ぐらい?に始まり終演は9時半過ぎてたと思うのですが、2時間強があっという間でした。楽しかった!。


以下、構成にふれてます↓↓↓



始まる前は妙なドキドキがしてまさしく吐く寸前でした。ビール1本しか飲めなかったし(笑)。そうこうしてたら客電が落ちて会場が真っ暗になって、ビバップの前奏が流れ小沢くんが歌いだしても会場は真っ暗のままで、何かと思ってたら曲がとまりステージの中央あたりにぼんやりと人影が見えて、すると小沢くんが何かを読み始めました。その内容はというと、“NY一帯で停電が発生し、それは一晩続き、真っ暗闇の中で人々を繋いだのは音楽で、昔の人は『門構えに音と書いて「闇」と読んだ』けど、真っ暗闇の中聴いた音楽は言葉の一つ一つがはっきり感じられて、まったく違って聴こえた”というもので、朗読の終わりと繋がるようにビバップを再び歌いだし、続いてぼくらが旅に出る理由に入ってもまだ真っ暗のままで、え?いつまで真っ暗なの??と思い始めた瞬間ライトが点いたらステージ上に小沢くんとツアーメンバーが勢ぞろい!!というオープニングでした。どんだけ焦らすねんと(笑)。なんていいつつライト点いた瞬間ぶわーーーーーってなんだか分からない感情が身体を突き抜けてボロボロ泣いたんですけどね(笑)。涙の理由はもちろん小沢くんが再びわたしの目の前に!!ってのが一番大きかったと思うのだけど、暗闇の中小沢くんの声を聴いてるうちに耳と心が研ぎ澄まされるというか・・・小沢くんの言葉を一語一句聴きもらしたくないと過剰に敏感になってたんだと思う。まさしく毛穴全開状態w。
オープニングだけでなく、合間合間に小沢くんの朗読があるのですが(オープニングのも入れたら5回・・・だったかな?)、どれもあーもうこの人めんどくせえええええええええ!って感じでさ、めんどくさいっ!でも好きっ><って感じでさ(笑)、最初はあんなにも毛穴全開にして身体中でその言葉を受け止めたってのに、体力の消耗もあって後半はだんだんと朗読タイムで弛緩しちゃうようになってw、でもそれはそれで悪くなかった。ゆったりと、それこそ目を瞑り揺蕩うように、時々心の中で突っ込みいれたり笑ったりしながら小沢くんの声と言葉に耳を傾ける時間は結構幸せな気がしました。
なんだったっけなぁ・・・?、日本人の男の人は顔が濃い人が多い(といってバンドメンバーを見回す小沢くんw。確かにこのバンド、みんな顔濃いwww)って話とか、過剰なほど“安全”が溢れてる日本なので日本人は“安全ボケ”になるんじゃないかって話とか、それなのに自転車に乗った途端安全という概念をさっぱり忘れてしまう日本人は普段のメンタリティは欧米よりでも自転車のハンドルを握った瞬間アジアの血が騒いでしまうのだってな話とか、「ひ(1)」の倍は「ふ(2)」で「み(3)」の倍は「む(6)」で「よ(4)」の倍は「や(8)」で、「ひ」と「ふ」はは行、「み」と「む」はま行、「よ」と「や」はや行と、昔の人は音で数字を表していたらしいって話とか、よく欧米の笑いは粗い(大雑把)だとか言うけどそんなことはなくて、むしろ特定の人種にしか分からないような笑いが多かったりして、自分しか分からない笑いには優越感がそうさせるのか大声を上げて笑うもので、実際にすごく楽しくて笑ってるから人種が違う人なんかにはイマイチ分からなくてもその気持ちだけは分かるもんだって話とか、貧乏とか貧困の概念なんてものは人それぞれで、エコノミークラスの乗客はファーストクラスの乗客を見て目的地は同じなのになんでわざわざ高い金を払ってファーストクラスで行くの?馬鹿じゃないの?って思ったりする一方で、毎週スニーカーを履き捨てる(1週間で捨てちゃう)金持ちの人は先週と同じスニーカーを履いている人をみて貧乏だからお洒落できないんだな可哀想って思ったりするって話とか、まーそんなような話をグダグダ(笑)読んでいたような。しかも肝心なとこ(自分の歌詞を引用したところとか)で噛むし(笑)。
どれも面白かったしもっと聴きたいぐらいだったのですが、ポイントは「聴きたい」ってところでして、こういう話を「文字として読む」のはどうかなー?って思ったw。「小沢くんの声」で「読んでくれる」から面白く思ったんであって、多分これを読むのはキツイだろうなーとw。なのでもし今後こっち方面の創作活動に力を入れるというのならば、本とセットで朗読CDにしてください(笑)。
でもなぁ・・・この朗読って、構成としては賛否両論なんだろうなぁ。これはコンサート全体を通して感じたことなのですが、小沢くんがやりたいことやりたいと思ってること、伝えたいこと感じてほしいこと、そういうものと、客が13年ぶりの小沢くんに対して求めているものが、微妙にズレてる気はしました。例えばね、間に朗読を挟んだビバップで始まりぼくらが旅に出る理由が終わったあたりで客はようやく「うおおおお!小沢だあああああああ!!」って実感し盛り上がりまくるわけなんだけど、そこでまた朗読に入るんだよね。そこはやっぱ続けて歌って欲しいじゃん。朗読はどれもただ読んでいるというわけではなく内容がちゃんと次の曲への繋ぎになっているので恐らく相当練った構成ということなのでしょうが、客の「気持ち」としてはガーッと盛り上がりたいわけですよ。小沢くんの(過去)曲たちはどれも終盤に向けて感情が盛り上がるものばかりだから曲の終わりでテンションMAXになったところで朗読されると盛り上がった気持ちの扱いに若干困ったw。なまじセトリが“あなたの聴きたい曲全部やります!”なもんだから上がって下がって上がって下がって・・・って別に朗読で下がるってわけじゃないんだけどw、まぁそんな感じだったかなー。
あ、でもこの朗読の時ってBGMっぽくバンドがちょっと変わった拍子のインスト曲を演奏し続けてるんだけど、朗読しながら文章の切れ目で小沢くんがその曲に合わせて微妙なステップ踏むのね。それがすこぶる可愛かったです(笑)。40過ぎのオッサン捕まえて可愛いとか言うな!っていわれそうだけどでもほんとに可愛かったんだもん><。
この流れで小沢くんの外見やらなにやらの感想を書いておこう。バンドメンバーはみんな木や動物や鳥の絵が描かれた白いデザイン違いの衣装な中、グッズとして売っていたピンクTにブラックデニムと一人だけ「色」として存在してた「ごぶさたしてます〜」(小沢くんの第一声)な小沢くんはさすがに老けてました。最初に姿かたちを確認した瞬間、あーやっぱ年とったなー小沢くん・・・って思った。具体的に言うとね、おでこのあたりがね・・・おでこさらに広くなってたよね・・・・・・。つーかそのグッズTの着こなしが微妙すぎたw。白い半袖のカッターシャツの上にTシャツ重ね着しちゃってるんだけどさ、ピンクTの襟元や袖口から白いシャツが中途半端に見えててね、そういやかつての小沢くんはそんな着こなししてたなーなんて思い出しながらこれはねーだろwwwと思いましたw。
しかも前髪まんなかパックリわけ・・・・・・いっぽ間違ったらキモオタ・・・・・・・・・(しろめ)。
ていうかほっそ!!!!!!薄っす!!!!!!!昔から細くはあったけど人間として生命活動を維持できる最低限の筋肉しかついてないんじゃ・・・?と思うほど細かったです。華奢すぎる後ろ姿だけなら10代といっても通用するわよ!まじで!。そんでもって腕が白い毛がない!!!どうがんばっても40代のオッサンなわけだから(笑)張りとかツヤはないもののすべっすべしてそうな美しい細腕にわたしは衝撃を受けまくりでした。
そしてその腕がギターをジャカジャカかき鳴らすのを見た瞬間、これええええええええええええええええ!わたしが好きな小沢くんはこれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!ってなった。ハンガーみたいな肩に力入れまくりながら身体を独特のリズムで揺らしつつギターをジャカジャカする小沢くん大好き!!!!!。・・・って思ってるうちに気がついたら小沢くんは何も変わってないように見えていたというね(笑)。力込めるところではギターから手を離し両手をギュッと握る小沢くんとかちょっと肩そびやかしながら上目遣いでチロっとバンドメンバーに目線を送る小沢くんとか、特にキャーン><となったのはアンコの時だったかなぁ?小沢くんがサイドの髪を耳にかけた瞬間だったんだけど、そういうところは全く変わってなかったです。あとメンバー紹介で自分のこと「小沢」って紹介するのもw。今も当時ももちろんわたしはミーハーの塊なので、曲もすきだけどやっぱり小沢くんのそういう仕草だったりニャハ☆って笑う笑顔だったりにキュンキュンしていたわけでして、だからそっち方面の気持ちは何度か当時に引き戻されましたw。
でも声は違った。当時とは全然違ってた。声質は変わらないものの、力というか・・・芯がある歌声だと思いました。昔の小沢くんの声は例えて言うなら華奢な扇子を勢いよく広げたような感じ・・・でわかるかなぁ?パーッと放射線状に広がるものの1本1本の軸は細い声だと思っていたのですが、今の小沢くんの歌声は広がるのではなく真正面の壁にぶつけるかのような直線的で力強い歌声だった。だからなのかなぁ?アレンジをガラッと変えてた『天気読み』がめっちゃめちゃカッコよかったです。ちょっとハウスっぽいアレンジだったんだけど、硬質なライティングも合わせて最高だった。ていうかこれ、ウキウキ通り〜天気読み〜ボーイズ・ライフ〜強い気持ち・強い愛 という怒涛の流れの中でだったんだけど、ここほんっっっっっっっとに良かった。朗読が入ることでイマイチ盛り上がりきれないと前述しましたが、その点ここは文句ナシ!。ちょうど中盤あたりなのでいい加減なにがなんだか分からない感情は治まってきてたんだけど、強い気持ち〜で再びボロッボロ泣いてしまいました。まさかまた生で聴ける日が来るなんて思ってなかったボーイズライフや強い気持ちを今目の前で小沢くんが歌ってる!!ってことが実感できた瞬間がココでした。
終わってこうやって感想を書きながら思い返してみると、朗読があったからこそこの流れが生きたんだろうなーと思った。アレンジを変えた天気読みをココに入れたこともそうだし、朗読の内容だけでなくみんなが聴きたい曲を全部やるために、ただの聴きたい曲オンパレードにならないために、しっかりと考えられた構成だったんだなと。だってこの後でミラーボールが降りてきてブギーバック演るんだぜ!?このちょっと前に唐突に歌詞を変えたラブリーの練習タイムがあるんだけど、「(ラブリーのほかに)もう一曲みんなに歌ってもらいたい曲があります」って言ってブギーバックが始まるんだぜ!?。しかもnice vocalパートを小沢くんが歌いsmooth rapは全部客に歌わせるんだぜ!?なぜだか完璧に歌えちゃうんだぜ!?。死ぬだろ(笑)。そしてそこで一つのピークを迎えたせいだったのかなぁ?その後にまた朗読があって、つぎに歌った麝香がとても素敵に聴こえたんだよなぁ。当時わたしが小沢くんに求めてるものはこういうんじゃないやって思ってほとんどエクレクを聴かなかったんで当然麝香もほとんど聴いてなかったんだけど、あれ?この曲こんなによかったんだ!ってびっくりした。今エクレク聴いたらしっくりくるかもなぁ・・・ってこういう風に感じたのもきっと構成マジックなのだろう。
新曲は3曲。「ニヤっとなる曲を作りたかった」という『シッカショ節』は飛び道具的なものとしてw(タイトルの説明をするのに「シッカショはカタカナで、節は“鰹節の節”ね」って言う小沢くんw)、他の2曲も過去の曲たちとは曲調も世界観も、それから使っている言葉もなにもかも全く違うんで、今現在の小沢健二から生まれるのはこういう曲なんだろうなぁ・・・とか思いながら聴いていたのですが、『時間軸を曲げて』という曲は好きかな。この曲が一番歌詞を読みたいと思った。
てかね、この曲の前にほんのちょっとだけ『ある光』を小沢くんにのみピンスポ当てる演出で弾き語りしたんだけど、これが今回のライブでわたしベスト!!!でした。フルで聴きたかったなー。
もう1曲は『いちごが染まる』というタイトルなのですが、漏れ聴こえてきた話によるとなにやらこれまではアンコールの愛し愛されて生きるのさでライブを終えてたそうなのですが、この日はその後の挨拶で「関係者席にも関係者席じゃない席にもこれまでの友達やこれからの友達、お世話になった人やこれからお世話になる人、知った顔がいっぱい見えて、すっごく嬉しいので今日は1曲歌わせてください」と言って最後にやったのがこの曲でした。ファンサービスというか、ファンに対しての1曲というならば他の曲をやるべきだと思うけど、ここでファンのことは全然見ずにまるで「僕は13年間でこんな人間になりました」ってな報告とばかりに新曲やる小沢くんが小沢くんらしくて思わず笑ってしまいましたw。
そうそう、小沢くんらしいなと言えばラブリーの歌詞を “LIFE IS COMI'N BACK 僕らを待つ”を“感じたかった 僕らを待つ”に、“CAN'T YOU SEE THE WAY?IT'A”を“完璧な絵に似た”と変えたことを教える時に、「完璧な、か ん ぺ き な、分かります?聞き取れない人いますか?。「かんぺきな」ですよ!。そんで絵は(指で宙に四角い額縁を書くジェスチャーをしながら)「絵」ね、絵。 か ん ぺ き な え に に た ですよ?分かりますか?聞き取れない人います?かんぺきなえ、絵 に 似 た 」と何度も何度も言っててw、そんなにしつこく言わなくても分かりますそこまで馬鹿じゃないですーと思いました(笑)。


見る前は楽しみな反面声出るのかなーとか新しい曲と昔の曲のテンションがあからさまに違ったらどうしよう・・・とか、くだらないことをいっぱい考えたりしたんだけど、嬉しくて楽しい時間を過ごせて幸せでした!。