『仮面ライダーW』第34話「Yの悲劇/あにいもうと」

今回の話はつまるところみんな大好き霧彦さんの補足話だったんですね。フィリップくんどころか翔太郎ですら在りし日の兄の想いを妹に伝える役目でしかなかったもの。まさか翔太郎にふうとくんキーホルダーとともに「この街を守ってくれ」と風都への想いを託した後から愛する妻冴子さんに殺されるまでの霧彦さんを見ることができるだなんて思ってなかったし、それどころか霧彦さんの生い立ちまで知ることができるだなんてね・・・・・・。だって霧彦さんってもう死んでんだぜ?Wという物語に於いては完璧に過去の存在なんだぜ?今更掘り下げる必要がどこにある?って感じじゃん。でもわたしは嬉しかったです。再び霧彦さんに会えてとても嬉しかった。誰がこの時期に霧彦と妹の話を作ろうと考えてくれたのか分かりませんが、その人には最大級のありがとうを言いたいです。
雪絵が永瀬さんたち悪徳不動産業者を襲った理由は、かつて兄・霧彦とともに過ごした場所を奪おうとしているからでした。妹の手を引き妹と二人の絵を描く幼い霧彦さん。きっと優秀な妹に勉学の場を与えるために必死で働いたんだろうなぁ。自分はいろんなことを我慢して。その結果貧しい生まれでありながらも自分の腕一本で社長の夫という地位まで登り詰めた霧彦さんって、わたしが思ってたよりもずっとずっとすごい人だったんだな。ボロボロの身体を引きずりながらも必死でなんでもない声を作り妹に電話をかける霧彦さんにとって、雪絵はこの世で一番大切な存在だったのだろう。それは婚約祝いにと妹がくれたスカーフを毎日毎日巻きまくってることでも明らかです。その雪絵に研究費も出ることになったし、もう仕送りしてくれなくていいよと言われた霧彦さんはきっと役目を果たせたと満足したんだと思う。これで思い残すことなく妻と共に逃げることができる、と思ったのだと思う。「暫く連絡がつかなくなるだろうけど心配しなくていい」と妹に告げた霧彦さんはあの時はまだ妻に殺されるとは思ってなかったと思いたいもん。あの瞬間の霧彦さんは、たった一人の家族である妹が立派に一人立ちしてくれて、それをちょっぴり寂しいと思いながらもこれでようやく自分の生きたいように生きることができると、幸せな気持ちで満たされていたと思いたいんです。たとえその先に待っていた結末がアレだったとしても、愛する妻に殺された霧彦さんが、風都の街は自分と同じく風都を愛する男に託し立派に育った妹はもはや自分の力がなくとも大丈夫だと思えたことで少しでも安らかな気持ちで逝ってくれたんだとしたら、それはわたしにとっても救いです。
・・・・・・・・・・・・ってちょっと待って。当たり前のように霧彦さんと雪絵は親をなくした孤児で、霧彦さんが汗水垂らして雪絵を立派に育て上げたんだと思ったんだけど、えーっと、雪絵が守ったあの『施設』って、翔太郎が「保育園」って言いませんでしたか?。保育園ってのは普通、決められた時間内で子供を預かる施設ですよね?。孤児院とかそういうものとは異なる場所ですよね?。あれれ??^^。
でも結局雪絵は兄の復讐のために(恐らく)全てを捨てて風都に戻ってきてしまったんだよな。定番セリフで“あいつは復讐なんて望んでない!”とか言うけどさ、今回は心底そう思ったわ。霧彦さんは絶対雪絵にこんなことして欲しくないはず。霧彦さんがこれまでにしてきた努力や我慢やもろもろは全てたった一人の家族である妹を好きな研究に打ち込ませるためだったのに(「保育園」に関してはスルーすることに決めましたw)、それ全部台無しじゃないか。今回ほど復讐という行為が愚かなことだと思えたことはありません。誰もいない虚空に向かって攻撃を繰り返すその姿が哀しいけど間抜けでさ、結局復讐という行為って、こういうことなんだろうなぁ。この流れから恐らく次回決着が着くのであろう照井たんの復讐譚に繋がるのは上手いなーと思うわ。ウェザーさんがアクセルに「復讐などというくだらないことにいつまでも拘っていると、彼女のようになるぞ?」と言わせる=アクセルパワーアップ回のネタフリという位置づけだと考えたら、なんと効果的かつ贅沢なネタフリ回なのかと。
上手いと言えば、雪絵に真意を語らせる流れも上手かった。前回といいイエスタデイメモリの力の使い方(見せ方)は完璧と言っていいと思うわ。微妙にズレてるけどでも微妙に噛み合ってる会話のおかげでそういうことだって分かってるけど驚くもんね。同じように昨日を繰り返してる人と今日を生きてる人との会話なのに、前回の翔太郎と照井たんのアホ会話とのギャップも凄まじいしw。兄を殺した女に復讐を果たしたつもりが逆に自分(が持つメモリ)の力に捕らわれそのことに気づかない、これまで利用してきた「昨日」に囚われ続けそうになったところをエクストリームの力によって救われ、でもメモリを使った代償、復讐などという不毛な行為の結果、大好きなお兄ちゃんの記憶も全て失ってしまった・・・ってオチも、これまでの記憶を失うということはこれまでの時間を失うことと同意なわけでさ、自分の過去を求めることは罪を数えることにもなるわけで、記憶をつかさどるメモリの物語としては良かったなーと思う。「兄さんの言うとおりだった。・・・やっぱり鳴海探偵事務所を訪ねて正解だった」と翔太郎たちに言ったほんの一瞬でも、雪絵は昨日から解放されたのだろうし、それに霧彦さんの日記を読んで全てを知ってしまったということは、もし通常通りメモリブレイク→逮捕されてたとしたら恐らく雪絵さんは園咲家の手のものによって遠からず命を奪われることになるだろうと思うわけで、そういう意味でも翔太郎は霧彦の妹を救ったと言えるだろうし。今回の話の罪と罰としてはこれでよかったと思う。
そうそう、井坂先生がイエスタデイドーパントがメモリの毒を刻印という形で排出したことを大層驚いていたけど、これは単に雪絵さんがそれだけ聡明だということを表現するためだけのことだったのか、この先への伏線なのかどっちだろう。てかそもそも全てのメモリがこういう形で毒を排出できるのかも分からないんだけど、ドライバーを介さなければメモリの毒に侵されることと、ドライバーを介すとメモリ本来の力が出ないこと、この二つの問題をクリアにする方法が提示されたってことなのかなぁ。それが冴子さんタブーのレベルアップに繋がる・・・とか。あ、そうだ。雪絵に刻印返しする時に冴子さんが「これでやっと私は過去から開放される」って言ってたけど、これってどういう意味なのだろうか。そのまんま受け取るならば自らの野心のためにぶっ殺した元夫に対し多少なりとも想いを残してた・・・ってなことになるけど、冴子さんってそんなタマか?と思うのよねぇ。会ったことはないけど霧彦さんに妹がいるってことは知ってたみたいだから、いずれ霧彦の死について妹が何らかのコンタクトを取ってくるだろうと思ってて、それまでは落ち着かねえとかその程度なのかなー。


で、今回また復讐鬼になってしまった照井たんに一体何があったのでしょうか。「そいつは俺の相手だぁっ!」なんつってものっそいテンソンで乱入してきたのはいいとしても、一人じゃ無理だってのはこれまでの戦いで嫌ってほど分かってるだろうに、Wにまで敵意剥き出しなのが違和感だった。やっぱあれかな、前回翔太郎に「お嬢さん」と言われたことを根に持ってんのかな(笑)。てかCJXでウエザーが持つメモリの力を全部無効化しちゃえば一発なんじゃないか?と思うわけで、やってやれないことはないんだろうけどでも照井たんの思いを酌んで井坂のことは照井たんに任せるって流れになるのかなー。アクセルがパワーアップするのは確実だろうけど、でもなぁ・・・今回の話で復讐の虚しさみたいなものを感じたわたしとしては、照井たんが井坂先生に『復讐』するのってどうなんだろう?と思うのよねぇ。第1部の敵というポジションであったナスカ霧彦さんはWの手ではなく言わば敵組織の内部争いで死んでくれたわけだけど、ウェザー井坂先生はどう始末つけるのだろうか。一応アレでも人間なわけでさ、照井たんの手でメモリブレイク→家族を殺した罪を償ってもらうと逮捕 ってのが真っ当な結末なんだろうけど、でもどう見ても更生は見込めないのは確実じゃないですか。となると『死刑』ってのもアリなのかなーとか思うんだけど、でもそれが『復讐の結果』ってのはマズイよな、やっぱり。これまで平成ライダーにあるまじき(笑)真っ当で王道な物語を見せてくれているWなので、照井たんと井坂先生の物語にどう決着つけるのか、楽しみだわ(心配しなくていいってほんとラクなのねw)。


翔太郎のコーヒー噴出しっぷりは相変わらずすばらしかったですが、ブフッて噴いた後更にもう一口飲む翔太郎ってほんと馬鹿よね(笑)。ていうか今回の事件を終え(その影響で)砂時計を自作しようと考える亜樹子の脳内がわからねえ(笑)。
そんでもって一番分かんないのが「自己陶酔している」だの「ハーフボイルド」だの「美人に弱い」だの「お調子者」だの「思い込みが激しい」だの「単純」だの、今更翔太郎のことを検索してるフィリップくんですよ。「不破夕子が翔太郎を好む確立 2%」とか検索せんでも分かるがなwww。