冲方 丁『天地明察』

天地明察

天地明察

江戸時代、日本独自の暦を作ることに人生を掛けた将軍家お抱えの碁打ち衆の話・・・
ということだけ聞いてもなんじゃそりゃ?って思いますよね。私もそう思います。人名こそ史実の中で馴染みのあるものが並んでいるものの、話の中心となるのはどこを見ても馴染みのないものばかりなので何度か手には取ってみたものの読み出す勇気がなかったのですが、土曜の昼間にダラダラやってる某番組でこの本に関して冲方さんがインタビューを受けてらっしゃるのを拝見し、冲方さんが本当に書きたいと思った物語ならばそれは読まねばならぬ!!と奮い立ち、そして今に至るというわけです。
ストーリーは最初に書いたただそれだけなんだけど、とにかく全編に情熱が溢れてます。正直この時代に『独自の暦をつくり改暦を行う』ということがどれほど大変で凄いことなのかってことが実感として感じられるわけではないのでその点に関してはどこかファンタジックなものすら感じたわけですが、その中で年代を越えた友情であり、ライバル関係であり、師弟関係であり、ありとあらゆる男同士の魂のぶつかり合いが詰まりまくっているのです。主人公の春海が20代前半から始まって、それに“あらゆる年代”が絡むってのがポイントね。これは女子的にたまりません(笑)。それに加えて下手したら物語で最も男前なのでは?と思うほどカッコいい“えん”という女性とのじれったいまでの恋物語まで描かれていたりして、まぁ私はこれに関してはさほど評価はできませんが(恋愛ネタ嫌いなんで)、エンターテイメント性は非常に高い作品に仕上がってると思います。しかもこの春海が天然なんだけど涙もろいのね。もう泣きすぎ!ってぐらい感動したり悔しかったりするとすぐ泣いちゃうわけですよ(笑)。一応我慢はするんだけどでも確実に涙こぼしちゃうの(笑)。でも保科正之酒井忠清水戸光圀など錚々たる面々に後押しされてるわ、年下の超天才碁打ちや同い年のこれまた超天才数学者からもその才能を認められてるわ、泣き虫のくせにスペックは高く、とにかく愛されタイプの主人公で、それを全く嫌味に感じさせないところがこの物語最大の魅力だと思いました。
でも実は私、春海がどうあがいても太刀打ちできない算術の神に選ばれし男・関孝和の方が好みでした・・・。沢山の人に支えられ励まされながら自分の夢を自由に追い求め続けられた春海に対し、立場上それができなかった関さんという人の人生が読みたいです。