乃南 アサ『ニサッタ、ニサッタ』

ニサッタ、ニサッタ

ニサッタ、ニサッタ

自分に合わないだのやりたいことと違うだの、なんだかんだと理由をつけて辞めグセを付けてしまった男が底辺まで落ち、ちょっと浮上したかと思ったらまた落ちて、なんだかんだでようやく本当にやりたいことと大切なものがなんなのか気づく・・・という腹立ちまくりな物語でした。腹が立ってしまうのは私も似たようなものだから。主人公との差ってのは仕事と自分に対して何らかの理想、言い換えれば幻想を抱いているか否かってところだけで、ちょっと好調だとすぐ調子に乗りそこまで積み上げてきたものを全て台無しにしてしまう、それも自分のせいで・・・ってところなんか他人事だとは思えない。本当に運が悪い人っていると思うんですよ。地道に頑張ってるのに自分の力ではどうにもならないことでその頑張りが報われない人はいると思う。でもこの主人公や私はそうではなく、紛れもなく“自分のせいで”なんだよなぁ。しかもそのことが分かっていながらもついつい調子に乗ってしまうわけです。根っこからダメ人間なんだろうな・・・。これがいかにも“作り話”であったならばここまで共感・・・というか共鳴?してしまうことはなかったと思うのですが、乃南さんの物語巧者っぷりが私にとっては裏目に出たわ・・・。