『新橋演舞場 花形歌舞伎』@新橋演舞場

松也好きなのでどちらかと言えば圧倒的に夜の部が見たかったのですが、どちらかしか見られない+ゲテモノ好きならネタとしてこの三五大切は見ておくべきという悪魔の誘いに乗っかって(笑)昼の部を見ました。


『盟三五大切』
この話は結構好きなものなのですが、わたしニンとかって実はよく分からないもののさすがにこれはメインの三人どれも違うだろう・・・と言うしかなかったです。わたしが見たのはかなり後半(23日)だったってのにこの熱の低さというかうねりのなさは一体・・・これはもう技術や気力云々の問題ではなく「合ってない」ということなんだろうなぁと。染五郎さんが演じる源五兵衛は復讐に駆られる狂気がさして感じられないし、菊之助さんが演じる三五郎はとにかく真面目で爽やかで全く悪人っぽくは見えません。亀治郎さんの小万はこの三人の中では最も良かったとは言えるものの、貫禄ありすぎというか・・・亭主に言われて結婚詐欺を仕掛けた女というよりも、全ての絵を描いた張本人って感じだものw。愛之助さんの八右衛門もなぁ・・・淡々としすぎてて主人を思う一途さからくる可愛さが感じられなかった。まぁラブに関してはこの後に控える踊りのことを思えばここはセーブしたくなるのも納得ですが。
特に染は悪のスイッチが入った時に壮絶な色気とオーラを出せる人だと確信してるもんだから物足りなさを感じまくり。格好はいいのよ。立ち姿は本当に美しくてカッコいい。でも源五兵衛ってそういうタイプじゃないよねぇ?。もっと無骨で冴えない男だと思うんだよな。そんな男が大切な使命(志)を抱いているにも関わらず女に入れあげいいように金を巻き上げられた挙句殺人鬼に豹変し、だれかれ構わずめった斬りにするというそのギャップが一つの肝だと思うんだけど、染の源五兵衛は最初からカッコよすぎるのね。スマートなの。まぁ無駄にプライドは高そうだから女に騙されたと知ったら逆上しそうではあるんだけどさw、豹変というほどには感じなかったなぁ。だから全てが明らかになった後で本来の自分を取り戻し、(一見)何事もなかったように討ち入りに参加するというその不条理さ不気味さがイマイチ伝わってこなかった。最初からおのれ小万・・・っ!って一気に鬼化するのではなく徐々に“人でないもの”になっていく過程はなかなか見ごたえがあったし(染こういうのほんっと上手いよな)、身体の動きもまた相変わらず美しいので虎蔵の家にいた三五郎の仲間たちを次々手にかける場面は見事だわ、メインとなる小万殺しの場面は亀ちゃんのエビ反りの見事さも相まってまさに壮絶なまでの様式美って感じでしたが、やはり染は三五郎の方が合うと思うし染の三五郎を見たかったな。
で、その三五郎ですが、久々に菊ちゃんの立役を見た気がするけど、こういう役をやるといよいよ本格的に親父様に似てきたなぁ・・・ってのが最初の感想ですw。でも当たり前ではあるものの、三五郎という役に必要な“悪の色気”はあの問答無用で落とされてしまう親父様のソレと比べるとまだまだまだまだ・・・だよなぁ。ほんと当たり前なんですけどねw。とにかく爽やかなんだよね。そして誠実に見えるの。話を知ってるからってのも大いにあるとは思うんだけど、本当は悪い男じゃないんだなってのがどうしたって見えちゃうのです。とは言え結果的にこれが悪い方へ出たかというとそうでもなく、この話って愛憎劇だと思うのですが(もっと上の年代の方々でしか見たことがないせいかもしれませんが、とにかく人間関係がくんずほぐれつするいわゆるドロドロ劇というイメージ)、今回の三五〜はむしろ仇討ち、つまり忠義=忠臣蔵要素が強く出てるとわたしは感じて、その理由は菊ちゃんの三五郎が持つ真っ直ぐさってのが大きかったんじゃないかなーと思ったんだよね。そしてそこがちょっと面白かったの。それが正解かどうか?と聞かれたら・・・はにゃ?って首傾げるしかないんだけどw。とまぁ爽やかだの色気足りねえだの言いながらも短めの着物の裾から見える菊ちゃんの白いおみ足と赤フンチラ見えはすこぶる良かったし、なんと言っても小万の腕に『三五大切』と彫り物を入れてる(毎度思うがアホな行動よなwww)時の筆を咥えたその仕草が!!(もちろん赤フン丸見えです!!!)、「腕が痛い・・・」と泣き言を言う小万に「俺に惚れてるなら我慢しろよ」と乱暴に返すその口ぶりに!!!!!全力でひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああっん><><><ってなったんですけどねw。
だがしかし。
最初に書いた通り、相手が亀ちゃんなのですこぶる微妙なのよねぇ(笑)。菊ちゃんの三五郎がはっきり言っちゃうと“青臭く”見えたのは亀ちゃん小万が姐さんっぽかったからだと思うw。小粋な深川芸者なわけだから姐さんっぽくて当然なわけで、菊ちゃんが頼りない(そう見えるw)のが悪いんだけどさw、船の中で菊ちゃん三五郎が亀ちゃん小万に覆いかぶさってコトを致すというナイスな場面があるんだけど、百戦錬磨の年上女に誑かされてる早く童貞を捨てたい不良少年に見えるんだもんwww。旦那の父親のために結婚詐欺の片棒を担ぐほど旦那を一途に愛する女にはちょっと見えないw。でも情の深さはしっかりと伝わってくるので、メインの四谷鬼横丁で源五兵衛に殺される場面の我が子に対する想い、自らの手で子供を殺してしまった嘆きと自らへの怒りは凄まじかった。染の感想でも書きましたが、この場面の空気感は濃密な恐ろしさで素晴らしかった。ていうかさ、やっぱり染の三五郎と亀ちゃんの小万だったらもっとラブラブエロエロになったと思うわw。ちなみに染の三五郎と菊ちゃんの小万だったら超絶に麗しいこと間違いなし!!w。
あ、もう1つの見せ場である小万の生首の口がパッカーーーー!は亀ちゃんさすがの顔芸っぷりでしたw。
太鼓もち虎蔵役の松也はなかなかしっかりとした台詞聞こえだし歌も上手に歌えてたしw、ビビリっぷりもアホ可愛かったんで出番は少ないけど満足できました。



『四変化 弥生の花浅草祭』
これは面白かった!。踊りはあまり得意(もちろん踊るのではなく見るのがって意味ねw)ではない上にお弁当をしっかり食べビールもしっかり飲んだ後だったので寝てしまうかも・・・と思ってたんだけど、全然大丈夫でした。むしろ目をらんらんと輝かせて見ました。だって踊りそのものも面白いのですが、松緑に必死で付いていくラブの図、が面白かったんだもんw。コンビでの踊りなので息とレベルを合わせなければならず、言い方悪いけどそれまで抑え気味にしてた松緑が最後の「石橋」で思いっきり本気出すのが面白すぎw。ラブとの余りの回転速度の違いに(3倍速ぐらいだった)ママンと二人で「ちょwwww松緑調子乗りすぎwwwwwwww」とざわざわしまくったわよw。徐々に徐々に回転速度を上げてくる松緑に対してラブは終盤首もげて死ぬんじゃないかとすら思ったw。松緑は腰から首までが一直線で上半身全部を使って見事な回しっぷりなんだけど、ラブは首だけで回してるように見えて不安定なの。毛の広がりっぷりも段違いだし、ここまで合ってない毛振り初めてみたわ(笑)。でも客もそれを楽しんでるんだかなんなのかw、50回をすぎたあたりから拍手喝采で盛り上がりまくり。三五〜が後味悪い話なのでこれで締めたってのは昼の部全体の流れとしてはなかなか良かったと思います。なんかホッとしたもんw。
一番良かったのはやっぱり「三社祭」。二人の踊りのタイプの違いがいいように表出してて、いわゆる好対照って感じ。それから、一番手前の三味線さんがわたし好みの甘いイケメンでしたw。
松緑の踊りはいいですね!。