辻村 深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

タイトルの意味にはそこに込められた想いを含めて、ほほー、なるほどなーと感心しましたが、それ以外はこれまでの作品と大差なくいつもながらの強烈なコンプレックスを感じました。30代に差し掛かる年頃の女達を描いてはいますが、印象としては学園ものと何ら変わりません。女特有の感情であり関係性を描いているという意味では桐野姐さんや真梨幸子さんと同じカテゴリーに属していると思うのですが、『女ってめんどくさい』と思うところまでは似ているものの、二人の作品からは『それでも私は女である』というパワーであり誇りを感じるのに対して、辻村さんからはネガティブな印象を受けるんだよな。そしてそこに全く共感ができない。これは別に私が恵まれているからとかそういうことではなく、むしろこの物語の鍵となる人物と同じく負け犬街道驀進中であるのに、それでも私とは別の生き物のようにすら思えてしまうということは根本的に何かが違っているんだろうな。それが分かっていながら辻村さんの本を手に取る理由は多分その違いに興味があるからなんだと思う。