『殺し屋シュウ 〜シュート・ミー〜』@博品館劇場

原作好き+紫炎さんこと丸山くんとわたしの滝こと滝口くん目当てでしたが、終わってみたら神保さんの素敵っぷりに撃ち抜かれ、リアル涙目でウットリしまくりでした。主演を筆頭に舞台に限らず演技としてはまだまだ・・・の若手が中心の舞台だけにその存在が輝きまくるのは至極当然なんだけどさ、そういうの抜きにしても神保さんの大人の男の色気といったらもうもうもうっ><カテコ(わたしの目の前に神保さん滝紫炎さんの順で並ぶとかとんだパラダイス銀河だった!)で舞台は20年ぐらいぶりと仰ってましたが、この色気を生で浴びることが出来て本当に幸せでした。


原作はろくでなしの父親を殺した青年が流されるままに殺し屋に仕立て上げられ沢山の仕事(殺人)をこなしやがて小さな幸せを手に入れるという連作短編集なのですが、タイトルにある「シュート・ミー」ってのはその中の一篇のタイトルで、あらすじとしては、自分の才能に限界を感じた女性アーティストからライブ中に自分を殺して欲しいという依頼された殺し屋(シュウ)がそれを実行するというただそれだけのことなのです。もちろんその過程で女性アーティストに自分を殺してくれる殺し屋と会ってみたいと言われたり、女性アーティストが死ぬまでの時間をどう過ごしたかが最後に明かされたりとドラマがあるんだけどでもそのまま舞台化するのはちょっと無理だろうってぐらいの短さなので、それをどう膨らませるのだろうかってとこに一番興味があったのですが、自分が担当するアーティストの自殺の段取りを手配するマネージャー役に神保さんをキャスティングし、原作では記号状態のこのマネージャーを膨らませることで女性アーティストと敏腕マネージャーとの悲恋を殺し屋の物語とは別の軸に仕立ててました。アーティストとしての夢をかなえるべく二人三脚で頑張ってきたかつての恋人にライブ中の死という最高にして最期の花道を飾らせようと準備する中どんどんと狂気の坂を転げ落ちていき、最後の最後でようやく自分の本心に気づくも時既に遅し・・・という哀れで悲しい中年男なんだけど、これがもーーーう神保さんにピッタリなのね。この業界人の特有の胡散臭さありーのw、売出し中の若手アイドルに手をだすエロさもむんむんありーのw、その一方で若くして(才能が尽きる前に)死んだアーティストを崇拝してる(そういう者こそが真のアーティストとして後世に名を残し曲が聞き継がれるという持論の持ち主)人なので、自分が育てたアーティストがその仲間入りをすることになることに言い方悪いけど夢中になっているというか、やっぱり表現すべき言葉としては『狂気』しかないんだけど、どんどんと目がギラギラしていき狂気にとり憑かれていく様が肌に伝わってくるのです。その時を迎える準備をしている中で自分のしていることは果たして正しいのだろうかって自問自答を何十回も何百回も繰り返していたのだと思う。でもその都度元はと言えばゆか(担当アーティスト)本人の希望だしアーティストとしてはそれが最高のゴールなんだと言い聞かせてきたのだと思う。そしてきっとアーティストとしてではなくただの女として愛する男の為に死んであげる(あげたい)というゆかの本心に気づいていたんじゃないかなと思うんだよな。少なくとも最後のステージに向かうゆかを見送った時点ではそのことに気づいていたと思う。その上で、自分はゆかをアーティストとしてではなく女として、マネージャーとしてではなく男として愛していると、愛する女を殺すシュウに吐露したんじゃないかなーと。そのことを愛する女を殺す男に知っていてもらいたかったんじゃないかなーと。だったら何もかも捨てる覚悟でゆかを追いかけ抱きしめればいいじゃん!って思うけど、それを選ばなかった二人には凡人であるわたしにはわからない“何か”があったんだと思う。ゆかを見送った後憔悴しきってまるで抜け殻のような永田(神保さん演じるマネージャー)の姿を見て、そんなことを感じました。ボロボロでありながらも圧倒的だった。共感なんてできるわけないんだけど、その姿を見てるだけでなぜか涙が出そうになってしまい、あー・・・役者ってこういうもんだよなぁ・・・と思った。素敵でした。

わたしがこの原作を好きな理由の一つは表向きはドライを装いながらも実はセンチメンタルなシュウのキャラクターなのですが、この舞台のシュウはドライさゼロの全力ウェット男でして、最初はちょっと戸惑いました。まず父親殺しの場面からして全然違う。原作は計画的な殺人ですが舞台は完全に母親を守ろうとした弾みだし、母親の人物像も原作では刑務所の中で禁止されている品を売買するなど到底模範囚とは言えないのですが*1、舞台では自ら息子の罪を被り服役したというのに“刑期が長い。早く息子に触れたい”と泣いて縋る哀れな母親として描かれてる。シュウの恋人も風俗嬢であると言う設定こそ同じものの、原作のイメージとは正反対のタイプ。ついでにダメ押しとばかりに原作では登場しない『シュウの親友』を登場させ『殺し屋』である主人公に共感だったり同情だったりをさせるためにここまで分かりやすく『運命に翻弄され望まぬ生き方を強いられている可哀想な男』にしたのだと思うのですが、見終わってみたらこれはこれでありというか・・・むしろ正解だったかなと思った。わたしがシュウというキャラクターを好きだと思ったのは「殺し屋シュウ」という一冊の本を通してのことであって、その中の一篇でしかないこの物語を原作通りのキャラクターで舞台化しようとしたらきっと冷酷なだけの男に見えただろうと思うし、シュウを演じる井坂くん(ミスブレの浪越(仲間さんゲスト回でリーダーに任命された行動科学担当の人))にもウェット男としてのシュウの方が合ってるんじゃないかなーって気がしました。井坂くんって背が高くて胸板や二の腕がムキムキしてて顔もキリっとしたタイプだから見るからに殺し屋っぽい雰囲気はあるんだよね。そんな井坂くんなので逆に頭抱えてワーーンと泣いて苦悩させたほうが絵になるってのはわかるかなーと。「殺し屋」としてよりも「シュウ」という人間を描こうとした・・・ってことかなと。井坂くんのシュウはとにかく見た目と中身がアンバランスだった。ギャップじゃなくてアンバランス。それが人間としての魅力に見えるってよりもこの人大丈夫かな?って不安な気持にさせるアンバランスさなのは意図してのことなのかそれとも違うのか判断しかねますが、とにかくギリギリで生きてるんだなーってのは充分伝わってきました。
で、シュウをいう人間を描くため(追い詰めるために・・・と言ってもいいと思う)に用意された「親友」役の滝ですが、立ち位置的に中途半端だったなぁ。ほぼ全編苦悩してるシュウが唯一素顔というか、本来の笑顔を見せるのは滝が演じる親友と恋人と三人でランチしてるシーンだけなんだけど、そこはすごく良かったと思う。殺し屋という裏社会中の裏社会の住人であるシュウが表社会と繋がるたった一つの窓口って感じで、滝のそのウザ真っ直ぐさwがシュウの孤独さを引き立てるように見えたし、この場面は悪くなかったんだよな。シュウが噴き出したハムサンドのハムが滝のタンクトップの中に入っちゃって「冷たい・・・」といいながら笑いも取ってたし、普通の若者って感じでなかなかよかったの。でも不審な行動を取りがちなシュウを“浮気してるんじゃ・・・”と悩む恋人に対し、「あいつはそんなことするやつじゃない」と言いながらも盗聴器をしかけるというある意味卑劣な行動に出るのがちょっとなぁ・・・と思った。厳密に言うと滝の目的は浮気疑惑を晴らすことではなく親友が怪しいオッサンに命令されてなにやら非合法な行為を行わされてるのではないか?と心配しての行動なんだけどさ、滝の役の性格(といってもさして掘り下げられてるわけではないのであくまでもイメージですが)からしてそういうコソコソとした方法を考え付くようなタイプじゃない気がしました。真正面から暑っ苦しく問い詰めるんじゃないかなーと。それを言ったら恋人も恋人で、これはわたしが原作を読んだからそう感じたってのは分かってるんだけど、シュウに対して浮気を疑うこと自体が違和感なんだけどね。

紫炎さんもまた舞台オリジナルの登場人物でしたが、えーっと、2時間15分ぐらいの舞台で登場時間は10分なかったかなと^^。OPシーンとEDシーンにちょろっと出ただけでした^^。シュウがゆかに頼まれ遺骨を撒きにきた海にいたサーファー役で、シュウに一方的に話しかけぼけーっとゆかの歌を聞き満足して去っていくというただそれだけのいわば『通りすがりの人』でしたが、ウエットスーツの上を腰巻きにしTシャツ+サンダルと珍しいお姿だったのでその点はそれなりに満足でした。カテコで股間に注目したのは誰ですか?はーいわたしでーーーーす!って感じで><。紫炎さんを見ると毎度毎度思うがまじイケメンな。つーかエロイ。紫炎さんと言えばカテコでオタの目にバチコーンと自分の視線を合わせてくることで(一部の間では)有名ですが、今回もすごかった・・・。今回はこれまでの舞台と違って紫炎さんは無名若手俳優扱い(目当てが少ない)だったと思うのですが、そのせいでしょうか・・・わたし見上げる→紫炎さんバチコンと目を合わせてニッコリ→まじ号泣の井坂くんや完全涙目の神保さんの感動的な挨拶を聞きながら涙目で紫炎さんを見る→紫炎さんも涙目になりながらバチコンテレ笑い!!!→滝を見る→滝の顎が軽く二重顎で絶望→紫炎さんを見てお口直し→既にバチコンスタンバイ状態の紫炎さんさらにニッコリ→はける紫炎さんに小っちゃく手を振る→紫炎さん胸の前で小っちゃく手を振り返してニーーッコリ→再度登場し立ち位置に立つ前にバチコンしつつペコリって頭さげつつテレ笑い→わたしもペコリし返す→さらにペコリする紫炎さん→はける紫炎さんに両手で小っちゃく手を振る→両手で小っちゃく手をふリ返す紫炎さん→舞台袖に入る瞬間クルっと振り向いてにっこーーーーーーーーり笑ってくれた紫炎さん。
・・・・・・パオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン★☆★☆
すごいよねえ、紫炎さん・・・これ狙ってやってるんじゃないんだぜ・・・・・・。天然ジゴロ恐ろしい・・・・・・。


イケメン枠にはゆかの大ファンの現マネージャー役の荒木健太朗くんも含まれるかと思いますが、荒木くんはとてもよかったです。この舞台唯一の常識人であり唯一の良心って感じで、とても可愛かった。紫炎さんがこういう舞台でこれぐらいの役をやれるようになるといいなー。



日頃オタ舞台ばかり見てるのでたまにこういう本気(いや、オタ舞台だって本気ですけどね・・・本気出すベクトルが違うということで・・・)舞台見るとわたしお金の使い方間違ってるんだろうなぁ・・・とか思って帰りの電車で落ち込みますよね。
でも紫炎さんカッコよかった。
そして滝は痩せろ。今すぐ痩せろ。バイク乗るな歩け。

*1:余談ですが原作ではこの刑務所内での母親の行動が謎なんだよなぁ。耐えていた反動でこんなヤンチャwな行動に出てしまったということなのだろうか