道尾 秀介『龍神の雨』

龍神の雨

龍神の雨

「ラットマン」や「シャドウ」と同系列に位置する作品と言っていいかと思いますが、やはり道尾さんはこういうの上手いわ。わたしの読書タイムは通勤電車の中なのですが、夢中になるあまり行きも帰りも乗り過ごし、電車待ってる間もホームで読み続けたぐらい面白かったです。かなり重い話ではあるので面白かったというと語弊がある気もするんだけど、とにかくひきつけられました。同じような境遇の二つの兄弟(兄妹)の物語なのですが、どちらも自分の力ではどうにもならない抑圧を抱え、絶望している。その象徴が作中ずっと降り続けている「雨」なのだと思う。そして、登場人物たちの「想像」を象徴するのが「龍」なのだと思った。はっきり言ってしまえばどちらも雰囲気作り程度の意味にしか取れませんでしたが、でもその雰囲気作りの上手さは道尾さんだなと。
自分と他人(それが血の繋がった兄弟であれ)の間には絶対に埋められない認識の差ってのがあるんだよなぁ。例え相手を思ってのことだとしても、やはり沈黙は罪だ、と思う。
章タイトルの意味を考えながら読んだにも関わらずやっぱり引っかかってしまいました。視点の切り替えは考えつくされてるなぁ。