遠藤 徹『ネル』

ネル (想像力の文学)

主人公の少年と小さな生き物（これ生き物って言えるかな･･・）が大切な人を救うため物語の世界を旅するというネタが先日読んだ宮部さんの英雄の書とモロ被りなので驚いてしまいましたが、こちらのほうが遥かに面白かった。物語の世界を旅するので作中作の形で沢山の物語が語られているのですが、『想像力の文学』シリーズとしての配本だけあってまさに「想像力」の凄まじさに圧倒されました。ジャンルとしてはファンタジーだと思うのですが、そこはホラー大賞受賞者の遠藤さんなので、世界観にはそこはかとなく禍々しさが、そして登場人物はサラっと書いてはいるものの想像したら思いっきりグロいというかシュールでした。そこはきっと譲れないところなのでしょう（笑）。
そう。この本は想像力をかきたてられるのです。登場人物がグロいと書きましたがそれは私の想像上のことであって、さほど具体的に描写はされていないのでもしかしたらものすごく可愛く想像する人もいることでしょうし、とてもメルヘンチックな物語だと感じる人もいるでしょう。でもきっとどんな読み方をしても間違ってはいないのだと思います。想像することに意味があるんだと思う。