永井 するみ『悪いことはしていない』

悪いことはしていない

悪いことはしていない

電子媒体で発表されていたのでしょうか?「ピスタチオ・グリーン」という作品と、その続編として書き下ろされた「デビル・ブラック」の2作による連作短編集です。
自分では地味で普通だと思ってるけどそれが自然体の魅力に繋がってて男女問わず好かれてる(ことに本人は気付いていない)主人公が、自分の幸せについて悩んだりしながらも毎日真面目に働く中で遭遇するちょっとした事件のお話と言ってもいいかなぁ?ちょっとしたと言ってしまうには若干大事すぎるんだけど(警察が関わるし)、まぁそんな感じです。
「普通のOL」が主人公だからあえてそうしているのかもしれませんが、とにかく主人公の印象が薄い。ファッションやメイクに対して努力をするのではなく(最低限の努力はしてるのでしょうが)、それよりも仕事に役立てるために外国語を学ぼうと努力をするタイプで、かと言って女<仕事ってわけでもなくて女性として相応の嫉妬はするわけですよ。普通っちゃ普通なんだけど、小説の中の人物(それも主人公)としてはやはり物足りません。主人公を取り巻く人として年上の女性が二人登場するのですが、描くために費やした文字数は主人公と比べ物にならないこの二人の方が内面も含めてはるかに立ってると思った。多分永井さんと年齢が近い人物設定だからなのではないかと想像しましたが。日常の謎がテーマの話はやはり主人公の目線に沿えないとただ淡々と話が進んで終わってしまうなぁ。
2作目は知らず知らずのうちに人から恨まれているかもしれない恐怖と、その理由がちょっとリアリティがあってそういう意味では読み応えがありました。