宮部 みゆき『英雄の書』

英雄の書 上

英雄の書 上

英雄の書 下

英雄の書 下

本編の8割を占めているいわゆるファンタジーパートよりも2割の現実パートの方が面白いというか、お兄ちゃんが主役(お兄ちゃん目線)の物語として読みたいと思った。いくら主人公サイドから見た物語とは言え実際にした行為を肯定というか美談にしちゃってるのはどうかと思ったし、お兄ちゃんもそれは本意ではないんじゃないかなーと思ったので。
英雄という存在には光と影の両面があるというのは例えば戦争という行為に置き換えてみれば納得できるテーマだし、また自分ではどうしようもない力(この物語で言えばクラス替え担任替え)によって自分の存在や信念が否定され捻じ曲げられる恐ろしさ、そして誰にだってありえる心の闇に『何か』がするりと入り込んでくる瞬間・・・読みながら平野啓一郎さんの「決壊」を思い出しました。まぁこれはあくまでもファンタジー小説なので全然違うんですけどね。
アジュがどうなったのか、ということだけが気がかりです。