パルコ・プロデュース公演 いのうえ meets シェイクスピア『リチャード三世』@赤坂ACTシアター

ワールドワイドウェッブを通じて世界中にこのようなことを発信するのは非常に恥ずかしいことなのですが・・・・・・無教養なわたしはリチャード三世と言われても常識レベルとしてすら話がピンとこないもんで、観劇前に松岡和子さん訳の原作を必死で読んでから臨みました。読んでおいてよかった。シェイクスピアと言えば長い台詞の掛け合いというか言葉遊びというか、とにかく『セリフ』『言葉』が肝だと思うのですが、ポイントとなる言葉は頭に入っていたので聞き取り難い場面も一応補完できたし、あと同じ名前の人がうようよいたりして人物間の関係性を把握するのが大変なのですが、予習していったことでそれもなんとか付いていけました。疲れたけどw。
そんなわけで“シェイクスピア劇”としての感想は到底書けないので、自分の観劇録としての簡単な感想です。


まず、原作(という言い方でいいのかな?戯曲と言うべき?)にかなり忠実に表現してたことに驚きました。外部公演(パルコプロデュース)とはいえどもいのうえさん+古田さん+劇団員さん多数出演ときたらリチャード三世をいのうえさん流にアレンジするんだろうとばかり思い込んでたもんで、音楽や照明、衣装や独白パートを文字にしたりワイドショーのようなテロップを多用するところなんかはそれらしいものの、かなり真っ当なというかそのまんま舞台化したなと。メタマクとまではいかずとも台詞とかもうちょっと壊してくるかなぁと思ってたんだけど、なんて言えばいいのかなぁ・・・シェイクスピア劇って蜷川さん演出のものしか見たことがないのですが、『映像』を抜いたら膨大な台詞を早口で捲くし立て、大きな身振り手振りで激情のままに言葉を吐き出すというわたしがイメージする蜷川シェイクスピアとさほど変わらないんじゃないかという気がしました。逆に言えば『映像』という違いがあるじゃんってことなんだけど、この映像もこれまでの枠からはみ出すようなものでもなく・・・面白くはあるけどいのうえさんの舞台を見慣れた側からすると更に新しい何かを見せてほしかったなと思った。ものすごく生意気な言い方ですが、いのうえさんにしか出来ない、いのうえさん流のシェイクスピア(リチャード三世)だったとは思えないかなぁと。ていうかむしろリチャード三世を下敷きにしたそめそめ主演の「朧〜」の方がいのうえ流に解釈したという意味では見ごたえがあったと思う。役者のルックスとは関係なくw、リチャードよりもライの方がはるかに悪のオーラとそこから醸し出される色気があった。もう一度書くけど役者のビジュアル関係なくねw。そうなんだよねぇ・・・肝心の古田リチャードに存在感がなかったんだよな。台詞の量は1人で全体の3分の2ぐらい喋ってるんじゃないだろうかってぐらいなんだけど、何ひとつ心を抉るような言葉がなくて、いや、言葉そのものに力はあるんだろうけど、それが古ちんの口を通してわたしの元へは届かなかった。外見が醜いリチャードにとっての“武器”は演技力なわけですよね?でも独白シーンの“素顔”と相手を誑かそうと被った“仮面”の間にさほどの違いを感じなかった。だから特に夫の遺体を前にして夫の仇から愛の言葉を聞かされ心を動かされたアンがバカに見えた。まぁこれは安田成美さんの一本調子のせいもあるんだけどね・・・。古ちんのリチャードは言いくるめた後で“うまくいったシメシメ”ってニンマーーっと笑ったり、「ばーーーーーーかっ」と吐き棄てたりするんだけど、それはすごくよかったと思う。だからこのリチャードは徹頭徹尾一ミリも同情も共感もできない完璧なる悪人ってんでなく、どこか滑稽というか愛嬌があるリチャードに見えたのね。そして実の母親からボロクソに言われるリチャードが可哀想にすら思えた。でもそれはいのうえさんと古ちんが作り上げたかったリチャードではないんじゃないかと思うんだよな。滑稽で実は弱い悪人だったら古ちん大得意なはずだもの。この舞台全体の印象って“悪くはないんだけど・・・なんか足りない気がする”って感じなのですが、その象徴が古田リチャードなのかなぁと思った。いのうえさんと古田さんのリチャード像が見えなかった・・・ということかなぁと。


と、書いておいてなんですが、面白かったか面白くなかったかと聞かれたら面白かったんだよなw。まずはなんと言っても先王妃マーガレット役の銀粉蝶さん、現王妃エリザベス役の久世星佳さん、リチャードの母・ヨーク公夫人役の三田和代さんが素晴らしかったです。特に銀粉蝶さんの存在感と迫力はすごかった。三人がどれだけ辛いか自慢wをする場面があるんだけど、女ならではの醜さとエゴが剥きだしのバトルで見ごたえがありました。リチャードやマーガレットの独白(呪詛)を舞台上に何台も置いたモニターに文字として表示させるってのは、長台詞を補う効果に加えてそれこそこうやって感想をダラダラ書き散らかしてるわたしを含め現代人がいかに無責任に無自覚に言葉を吐き出してるかということを表現してるのかなぁって思ったし、リチャードに命令され次々と人を殺す暗殺者(川原さんが演じてたんだけど、すごくよかった。この舞台で一番リチャード三世という戯曲が持つ「悪意」とか「まがまがしさ」を表現してたのが暗殺者ティレルだったと思う)が仕事を終えたあとにアイスクリームをばくばく喰うとか黒い演出も嫌いじゃないし(特にクラレンスから斬りとった首を持ち帰るためのクーラーボックスにソフトクリーム(コーンタイプ)を入れておくとかほんと悪趣味)、なんと言ってもわたしの裏お目当てである川久保拓司くんの役があまりにもツボだったんですものwww。たくじめちゃめちゃ美味しい役すぎるwwwww。休憩20分入れて4時間近い舞台なのですが、たくじが出るのはラスト20分ぐらいなのね。なもんでわたし休憩時間お友達に「ねえ、たくじってどの役?」って思わず聞いちゃったぐらいなんだけど(事前に役名を調べておかなかったのでまさかわたしはたくじをたくじだと分からないのかと思い休憩時間慌ててパンフ買ったわ。そしてお友達には「知らねーよ!!」と冷たく突き放されました・・・)、待ちくたびれたところでようやく登場したと思ったらテラオスカルwwwwwwwww金髪巻髪で全身真っ白ってぐらいの衣装で(白タイツキモイwww)マイクもって演説するんだものwww。たくじの役は榎木さん演じるスタンリー卿の息子で後にヘンリー7世となるリッチモンド伯という役でして、国王の座についたリチャード三世にトドメを刺す役なのね。ちょう美味しいべw。同じく裏お目当てのロリコン始こと森本くんが扱い的には劇団員とどっこい(違いと言えば顔出ししてるかしてないかぐらいの差)レベルだからたくじもきっとそんなもんだろうと思ってたもんで本気でヒャッホーーーーイ!てなりましたw。つーか森本くん演じるドーセット候はリチャードの報復を恐れてリッチモンド伯の元へ逃れる役なんだけど、リチャードを倒し勝利宣言するリッチモンド伯の横にちゃっかり並んでんのねw。つまりウルトラマンネクサス仮面ライダーカリスが共に勝利の雄叫びを挙げてるわけですよ!!めちゃめちゃ燃えるわ!!w。この場面、2人の間には王妃エリザベスの娘エリザベス(なんで同じ名前なの・・・)がいるんだけど(はっきり言って邪魔だわ!!)、この娘エリザベスをリチャードとリッチモンド伯が取り合いをしてる形なのね。リッチモンド伯の本音はわからないけど、リチャードは自分の地位を固めるためにこの娘との結婚を画策し母である王妃エリザベスに間を取り持ってくれとお願いしてるの。実際に母から娘へ話がいったのかどうかってことは定かじゃないけど、娘エリザベスはリッチモンド伯にゾッコンって感じなのね、だってイケメンだから!!。そう!古田リチャードの醜さと対比させるためかたくじリッチモンド伯は無駄にイケメンなのですwwwww。そら娘エリザベスもリッチモンド伯の元に走るわってのw。いやー笑い堪えんの必死だったわ。たくじがいちいち何か言ったり中継カメラに向かって指を突き出して力強く訴えたりするたびに、ちょwww武蔵様アホキモスwwwwwってなるんだもん。カテコ挨拶で並んでる時も一人だけ光はなってるしさぁ、あ、これは輝いてるという意味ではなく全身白+金髪なので文字通り発光してるという意味ねw、ほんといい役だったわぁ。とても面白いものを見せてもらいました^^。


・・・・・・っていい気分で帰途についたのですが、ふと“あの女ってほんとにアゲマンなのかしら・・・”と思ったら急にテンソン落ちたことも記しておきますw。



余談ですが、新しくなったACTシアター初めて入ったんだけど、噂に違わず酷いですね・・・。座席も酷けりゃ音も酷い。そして最悪なのが動線な。トイレの列がロビーの真ん中をのたうちまわるように伸びてて、飲食スペースに行くにも座席に戻るにもその列をちょっとすいませんって割って入んなくちゃならないとかめんどくせー。結構な人数の従業員がいるんだから階段に並ばせるとか邪魔にならないよう誘導してくれよと。あと座席の狭さも覚悟してた以上だった。ちょっと足をよけたぐらいじゃ通れないぐらいの幅しかないのね。そのくせ並んだ座席数は結構あるから遅れて入ってきた人が座席につくまでものっそいモタついてんのよ。遅れてきた人は自分が悪いんだから気まずい思いするのは当然だと思うけど、目の前でいつまでもゴソゴソされる方はたまったもんじゃないわけ。いいところっつったら駅の真上ってぐらいなのよね。できることならあんまり行きたくない。でも新感線の次の公演もココ・・・。