堂場 瞬一『チーム』

チーム

チーム

『誰のために、何を背負って俺たちは襷をつなぐのか』(帯より)
というわけで、大好きな箱根駅伝に出場する「学連選抜」の物語ときたら前のめりで食いつくしかなかったわけですが、うーん・・・・・・・・・期待してたほどのドラマや萌えはなかったかなぁ。わたしの中で箱根駅伝小説と言えば三浦しをんさんの「風が強く吹いている」でして、風が〜は箱根を走る10人全員にスポットを充て大なり小なりドラマというか背景を用意してくれていたのですが、この本で描かれるのは(ほぼ)4人のランナーのみ。順位は変わらないという描写だけで全く描かれない区間すらありました。作中でも記述がありますが、私も駅伝って最も難しいチームスポーツだと思うわけで、実際に戦うのは個人の力なんだけど、その背後に絆や想いや伝統の重み、目に見えないいろーんな物が存在していて、意識がなくなっても、選手生命がここで終わることになったとしても、「襷を繋ぐために」「仲間のために」走り続ける、「たった一人で」・・・それが駅伝と言うスポーツなのです。そんな苛酷な「チームスポーツ」の世界で敗者の中から選抜されたいわば寄せ集めの「学連選抜」を外と中からガッツリ描いてくれてることを期待してたのですが、わたしが求めていた人間ドラマはこの中にはありませんでした。駅伝オタのわたしなので、冒頭の記録会の場面やコース上のポイントの描写なんかはもう克明に思い浮かべることができて臨場感はなかなかあったと思います。レース中の駆け引きや痛む足に対するランナーの心理描写も真に迫ってたと思う。でもわたしが読みたかったのはそれだけじゃなくて、チームは負けたのに一人だけ箱根を走ることができる選抜選手の葛藤や送りだす側のチームメイトの気持ち、名監督と呼ばれながらも監督として自分のチームを率いることができなかった監督を支えた家族の想い、そして「誰のために」「何を背負って」走るのか、レースそのものではなく「学連選抜チーム」に関わる人々の想いみたいなものが読みたかったんだよなぁ。もちろんメインとなる4人のランナーの想いは描かれます。でも「チーム」だけど「個人」なのが駅伝なんだよね。だから10人いれば10人それぞれの想いがあるはずで、欲を言えばサポートに回る人達の想いもあるはずなわけで、そこを描いて欲しかったなと思いました。
あとね、女子はやっぱり男の子の友情が大好物なわけですよ。主人公の浦を中心に、浦×山城、浦×門脇、浦×青木、浦×広瀬、浦×朝倉といろんな組み合わせがあることはあるのですが、どれも薄い!絶対的に足りない!!前二つはまぁこんなもんだとしても浦と青木の絡み(文字通りね!)はもっともっともおおおおっとトキメキ成分入れられたはず!ここいらへんはやはり作者の性別が大きいのかしら・・・。

次の箱根は学連にも注目したいと思います!!