東野 圭吾『ダイイング・アイ』

ダイイング・アイ

ダイイング・アイ

バーテンダーをしている雨村は、ある晩店に来た一見の客に頭部を殴打され瀕死の重傷を負う。目が覚めた雨村は過去に自分が交通事故を起こしたことを聞かされる。自分はなぜそんな過去を忘れているんだろうか。雨村は自ら過去の事故について調べ始める。その最中、店に現れた不思議な女に惹かれていき・・・。


冒頭の事故シーンの描写(被害者目線)と事故の真相はさすが東野!って思えましたが、それ以外は「うーーーーーーん・・・・・・・・・・」って感じ。前半は官能サスペンスで後半はむしろホラーテイストが強いのですが、どれも小粒な感じで、それでもその中に一本びしっと東野テイストがあれば満足できた気がするんだけど、それもなかったんだよなぁ。なにが(私が思う)東野テイストなのか?と聞かれても上手く説明できないんだけど、交通事故の加害者と被害者双方の心の重荷とか受けた傷の大きさの違い、その不条理?を描くのに、霊的なものだったり失くした記憶だったりそういうものを入れられるとあいまいというかぼかされた感じを受けた。科学とか理論で説明できないものを描いたってのは分かってるつもりですが。
あとやっぱり思う。東野は女を描くのが下手だと。物語の鍵になる怪しげな女からは全く色気も妖気を感じないから主人公が嵌る気持ちも恐怖心も伝わってこないんだよな。だから特別必要だったとも思えないエロ描写もちっともエロくないし・・・。