雫井 脩介『ビター・ブラッド』

ビター・ブラッド

ビター・ブラッド

警視庁S署の新米刑事・佐原夏輝が初めての現場で組むことになった相手は、幼い頃に家族を捨てた本庁捜査一課・ベテラン刑事の父親だった。内心父親に反発心を抱いている夏輝だが、父親を筆頭に、クセ者揃いの刑事たちに囲まれながら刑事としての初仕事を終える。それから約一ヵ月後、父親たちの直属の上司が殺害され、夏輝はまたもや父親と同じ現場で働くことに。内部犯行説が囁かれる中、一ヶ月前とは全く違うクセ者刑事たちの態度に戸惑いながらも、情報屋・相星の協力を得て、夏輝は独自に事件を追う。


雫井さんが狙ったのか、それとも映像化する側からのオファーがあったのかどうかは分かりませんが、これ完全に映像化を念頭において書かれてるだろう。内容よりもキャラを立てることを優先にしたのがミエミエで、“ジェントル”だの“スカンク”だの“バチェラー”だの恥ずかしくなるようなあだ名を付けられた捜査一課の刑事たちに、20代の内心ツッコミ体質(心の中でいちいちツッコミ入れるタイプ)でわりと可愛い(イメージ)若手刑事が主役で、普段は大人しそうなのに夜の仕事の時は見違えるように華やかになるヒロインに、明るくて超マイペースで憎めない腕のいい情報屋(多分これも結構見た目はいいはず)と、幅広い年齢に受けそうなキャラクター配置になってます。ほんと、登場人物ではなくキャラクターって書きたくなる感じ。やたらと出てくるジャケットプレイとかクーガー対応法とか足つった!とか、思いっきり映像向けのネタだもんなぁ。実は結構酷いというか、悪と癒着した警察官の暴走じゃすまないだろ!ってぐらいヘヴィーな内容だったりするんだけど、全くそんな雰囲気ではないどころか普通に「へー、そうなんだー」って流してしまいそうになるぐらいで、人物が8割ストーリーが2割ぐらいのバランスなんで書き込みが足りないどころの話ではなく、映像化すれば生えるというかインパクトがある伏線になりそうかなとは思うけど、でも今のとここれは小説なわけで、だとするとそんなことで犯人の目星つけちゃうのかよ!!と思わずにはいられません。ネタバレせずに書くの難しいんだけど、この本で書かれてるような状況になくても私めちゃくちゃ餌食になるもん。他の誰一人そんなことなくとも私だけは餌食になるもん。だからこれにはちょっと納得できないというか、文句つけたい(笑)。でもまぁ読みやすいし、キャラ自体も魅力があると言っていいと思うので、面白かったことは確かなんだけど。
ちなみに主人公は妻夫木か瑛太さん、父親は伊武さんで読みました。