高田 侑『顔なし子』

顔なし子

顔なし子

年老いた父と同居するため、妻子を連れ20年ぶりに故郷へ戻ることにした修司はある少年のことを思い出していた。かつて父親の再婚相手として突如修司の前に現れた美しい女・セリが連れていた桐也のことを。修司の帰郷と時をおなじくして頻発する不審な出来事。そして村を駆け巡る桐也の噂。母親の受けた仕打ちを恨む桐也が残した不穏な言葉を思い出し、見えない影に怯える村人たち。桐也は“顔なし子”なのか・・・。


地方の小さな村に伝わる伝説や伝奇に纏わるというかそれを彷彿とさせる事件が起きる土着ホラー(土着ミステリー)風の話でした。“風”というのは、頻発する事件に対して実際に“顔なし子”を思い浮かべてるのは修司だけで(村の中で囁かれたりしてはいない)それはあくまでも雰囲気作りとしての役割であって、描かれているのは一人の孤独でミステリアスな“美少年”(←ここ重要)を軸に、修司と父親の和郎、そして桐也から「姉ちゃん」と呼ばれ慕われていた修司の同級生・麻樹の家庭だったりするんで、むしろ家族愛の物語、そんなにおどろおどろしい感じはなく、想像したのと全く違ってました。
視点が修司と麻樹だけでなく麻樹の娘の桃子としても描かれるんでちょっと散漫な感じがした。修司の家庭には桐也の存在以外にさしあたって問題がない分、麻樹の家庭に動きをもたせるためだろうけど、修司サイドの物語、例えば都会から閉鎖された村へ、それも夫の実家に悪い噂があるようなところへ連れてこられた修司の妻の描き方とのバランスが悪いのが気になりました。あと事件の結末のあっけなさというか唐突さはこういう形になるんだろうなと予想してた通りであったにもかかわらずやっぱり力が抜けました。こういう後だしジャンケンみたいな結末は萎える。