- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
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以下、軽く内容に触れてます。
さあ読むぞ!と気合入れたところで、ま、前畑滋子って誰だっけ・・・?と暫し焦りました。模倣犯を思い出そうとしてもあのクソ映画と超絶棒だった最初の死体の発見者の少年役の記憶しかない私・・・。で、どうしようかなぁ、もう一度模倣犯読み直してからにしたほうがいいかなぁ、と逡巡したのちに“めんどくせ”ということでそのまま読み始めることにしました。読書に対するモチベーション下がりすぎだわ。確かに前畑滋子という女性ライターを知る上で過去の事件を再確認しておいたほうがより一層理解できたとは思うし、この事件に首を突っ込んだ動機や、作中何度も“あの事件の前畑さん”と言われるのでその知名度を測る上ではパラパラっと読み直したほうが良かった気がしなくもないですが、ほとんど覚えてなくとも話の筋を追う上ではさほど不都合はなかったように思います。
一つの事件の本当の姿を解明するために、一人でも多くの関係者の証言を集め整理する・・・宮部さんのお得意パターンに、超能力、そして美少年と、著者名を明かされなかったとしても宮部みゆきだなって自信を持って答えられるぐらいの宮部ワールド全開という感じでした。上下巻だし、読んでる間はそれなりに夢中になって読んでた自覚はあるんだけど、読み終わってみるとさほどこう重みみたいなものが残らないのは何故だろう。すっかり忘れてた存在を最後の最後に持ってきて、救いというか、ちょっとホッとできるような読後感を与えるあたりは上手いなーと思ったけど(でも私は好みじゃない)。あと女の描き方、情念ってんじゃないけど、倫理だったり論理だったり、女ならではの考え方はさすがに上手いなとも思いました。特に美術教師と土井崎母。どっちも女ならではのエゴ丸出しだよなぁと。もちろんレベルは全然違うんだけど。
最後まで土井崎茜という少女は心底どうしようもない子なんだと思い続けたところで一縷の望みというか、少女らしいところを見せたところで両親がとった行動・・・子供を生んだことも育てたことも、それどころか満足に接したこともない私にしてみればやっぱりそれは間違った選択だったんじゃないかな、と思う。もしあそこで違う選択をしていれば・・・と思ってしまう。その寸前まで茜に更生の余地なんて全くないと思ってたのにそんな気にもなってしまうだなんて、宮部さんはやっぱり子供に希望を抱いてるというか、あんまり悪く書きたくないんだろうなぁ。・・・でも結局こういう流れになってしまうシビアさもまた宮部さんなんだけど。
ところで結局、等は山荘の絵をどうして描くことができたのだろうか。これは回収できなかったというよりも、一種のロマン、永遠の謎として受け止めるべきなんだろうな。