笹本 稜平『越境捜査』

越境捜査

越境捜査

上司と反りが会わず、遊軍扱いとして事件がない時は適当な継続捜査物件を見繕い捜査にあたる特別捜査一係に所属する鷺沼は、14年前に自らも捜査に関わった森脇康則殺害事件の再調査に取り掛かることにした。殺された森脇は巨額詐欺事件の被疑者でもあり、森脇の死の真相とともに当時森脇が持っていたとされる12億円の札束の行方も不明である。警視庁とは犬猿の仲である神奈川県警の管轄内で捜査を開始した鷺沼は、開始直後、謎の男たちに酷く痛めつけられる。犯人は鷺沼の行為を快く思わない警察内部の人間と判断した鷺沼は、元上司であり現在は神奈川県警警務部監察官室長である韮沼に協力を仰ぐ。同じ頃、県警の不良刑事・宮野が鷺沼にコンタクトを取ってくる。宮野は12億円の中の一枚を偶然手に入れていた。様々な思惑が錯綜する中、鷺沼は宮野とともに巨大な敵に立ち向かう。


帯に神奈川県警VS警視庁とあるもんで、そういうものを期待してというか、警察内バトルみたいなものなんだろうなと思いながら手に取ったのですが、終わってみれば男の冒険活劇刑事バージョン、つまりいつもの笹本稜平節・・・という感じでした。鷺沼はともかく金髪にピアスという宮野の外見は刑事としてありえないと思うし、途中からヤクザと協力し合っちゃいますからね、もうなんでもアリだなと。いつ一般人に銃突きつけて車両泥棒するかと思ったぐらいだもん。今ちょうど見てるところだからそう感じたんだとは思いますが、次々と襲い掛かるピンチ、味方だと信じてた人間に対して芽生える不信感、なかなか見えない黒幕・・・鷺沼の刑事としての矜持は分かるけどそれは人間としてどうなの?と首を傾げたくなるような言動と思考と行動のちぐはぐさとか、そんなノリが『24』っぽいと思いました。ほんと“活劇”って感じ。黒幕との最終対決が笑っちゃうほどあっけなくて話の終わらせ方が強引だなぁという印象は否めませんが、ラストはちょっとホロっとしてニヤっとしてスカっとできるし、なかなか面白かったです。