東野 圭吾『夜明けの街で』

夜明けの街で

夜明けの街で

不倫するやつなんて馬鹿だ。何の疑いもなくそう思ってた僕だが、その台詞を自分に対して発しなければならなくなった。流されるかのごとく、しかし至極当然の流れに流されるまま僕が不倫関係に堕ちた彼女は、まもなく時効を迎える殺人事件の重要容疑者だった。


うーん、悪くないのかもしれないけど、東野さんの作品だと思うと駄目だ。東野作品に対するハードルは高いもの。私がこの手の話が苦手なのもありますが、バカだと思いながらも不倫に嵌っていく男の哀れさも、愛人というポジションにいる女の辛さもまったく伝わってこないし、そもそもこんな綺麗というかスカした不倫なんて不倫じゃないって。読み終わってみればそこらへんも意図してのことだということは分かりますが、とりあえず読んでる間は退屈だった。とは言え詰まることなくすいすいと読めてしまったわけで、またも東野マジックに嵌る私・・・。
リアリティとかそういう問題ではなくて、不倫小説として読もうとしても色気がまったくない。エロさがない。その一方で、男がクリスマスデートの為にアリバイ作りをする描写とか、過去の殺人事件の描写なんかはシャープでいかにも東野さんなんだよなぁ。でも、不倫という衣を纏わせたせいで、動機も方法もそれはさすがに・・・って首を傾げたくなるようなもので、東野さんらしくない。全体的にすごくアンバランス。番外編はちょっと面白かったです。