高野 和明『6時間後に君は死ぬ』

6時間後に君は死ぬ

渋谷の街で声をかけてきた見知らぬ若い男に「6時間後に君は死ぬ」と予言された美緒。6時間後は美緒の25回目の誕生日になる瞬間だった。人のビジョンが見えるという男の言葉を信じた美緒は、自らの運命を変えようと努力する。

人の未来を“ビジョン”として見ることができる男・圭史のうわさを聞きつけて訪れる女たちの物語が連作短編集の形で描かれています。今書いてて気がついたけど、男が視点の物語は一つもなかったな。それがこの本の特徴を表してると思う。この圭史という人物がまぁオトコマエとして描かれていて、特に何度も描写される「ふんわりとした声」ってのが女心を擽るというか･･･まぁやさしい死神的な存在で、最後の1編なんてモロによくある死という甘美なトッピングをまぶしたラブストーリーですから、その手の話が好物な女子に受けそうだなぁという感じです。確実に私の好みではない。圭史が見る“ビジョン”がさほど丁寧に描かれているわけではないので、想像することはできるけどでもなんかピンとこないし、圭史がこの能力を得たキッカケやここまでこの能力とともに生きてきた道のりなんかはほぼ描かれないので、外見や雰囲気ばかりでその内面は分からず、こういう結末を用意されても何も伝わってくるものはなかったしなぁ。映像化したらもうちょっと分かりやすくなるのかもしれませんけど。