上遠野 浩平『メイズプリズンの迷路回帰』

母親と母親の男に嫌気がさし家出した少女・西秋有香は、詐欺罪で服役中の父親と面会後、双季蓮生と名乗る不思議な老人と出会い、父親が計画していた“ペイカーカット”と名乗る怪盗の名を騙り、保険会社から金を詐取する犯罪を実行することにした。双季は保険会社の調査員2名と接触するが、同時に強大な権力を持つ東澱の人間からも追われていた。そして偶然事件に関わったベテラン刑事は双季とは浅からぬ因縁がある間柄であった。有香と双季は海の見える場所へと向う。そこで明らかになる哀しい過去。そして有香は自分の道を見つける。


ソウルドロップシリーズ。今回は喪失と再生の物語と言っていいかな、ちょっと哀しくて、でもちょっといい話ではありますが、シリーズとしての展開に乏しい。雅人の中に眠る元の人格が現れ、奈緒瀬は心の重荷を一つ下ろし、伊佐はペイパーカットに対する感情の意味を自覚し始め、少しずつ進んでいるのは確かなのだけど、どうにも盛り上がらないんだよな。若干飽きてきたぞ。ペイパーカットはいつまで“研究”を続けるつもりなのだろうか。