西澤 保彦『春の魔法のおすそわけ』

春の魔法のおすそわけ

春の魔法のおすそわけ

四捨五入すると40の中堅女性作家・小夜子は、ある朝自分のものではないショルダーバックを抱えて、二日酔いで朦朧としながら満開の桜が咲く千鳥が淵にいることに気がついた。そこに至る経緯を全く思い出せない上に、バックの中を改めると中には万札がごっそり。自分の行く末に疑問を感じ、同業者からの嫌がらせでヤケクソになっていた小夜子はこの札束をパーッと使ってしまおうと決意するが、使い方が思い浮かばない。そんな小夜子の前に現れた謎の美青年。「よっしゃ、血迷うぞ」と小夜子はその美青年を鞄の中の札束で買うことにしたが。


西澤保彦のお試し版というか、いいとこを一口づつつまみぐいしたような感じ。SFではないけれど不思議な設定に、エロにレズに美味しい料理とお酒にちょっとした謎を鮮やかに解き明かしてくれる(それが必ずしも正解ではないとしても、読者としては納得できる)。ほんとこれぐらいのものならいくらでも書けそうだよなぁ。すごいなぁ。
相変わらず女の描写は容赦なしです。腋毛ボーボーとか男性には普通書けないと思う。思わずわが身を振り返り、怖くなるんですけど。チャンスはどこに転がってるか分からないもの!(違う)。