荻原 浩『四度目の氷河期』

四度目の氷河期

四度目の氷河期

小さい頃から何をやってもみんなと同じように出来ないワタルは、ある日死んだと聞かされた父親について重大な秘密を発見する。その瞬間から、自らの血に流れる本能に導かれ、ワタルの孤独なサバイバルゲームが始まった。『明日の記憶』の著者が描く、一人の少年が「自分」として生きるために奮闘する感動青春大作。


最初はトンデモバカ小説なのかと思いましたが、そこはようやくブレイクした荻原浩。誰にだってある(あった)自分は一体何なんだろう?自分が見ているものは果たして他人も同じように見えているのだろうか?大人の階段を一つ一つ昇るたびに感じる不安と希望が、時に痛々しく時に瑞々しく、自信を持って描かれています。以前から良質だけど捻ったものを程よい頻度で発表してくれる作家だと思ってましたが、完璧安定期に入った感じ。恐らく『明日の記憶』のイメージで固定されてしまわないように、あえて全く違うタイプの作品に挑戦したのだと想像いたしますが、でも物語に流れる力強さと、たとえ道が細くても石だらけでもそれでもまっすぐ歩いていく、いかなくちゃ、という真摯な想いは共通だと思う。私も頑張ろう、柄にもなくそう思いました。