乃南 アサ『風の墓碑銘』

風の墓碑銘

風の墓碑銘

下町の解体工事現場から成人男女の白骨死体が発見された。女性の骨盤近くには胎児もしくは嬰児と思われる骨もあった。その骨を掘り出したのは、女刑事・音道貴子。相棒と共に大家を訪ねた音道だが、大家は痴呆症を患っていて、思うように聴取は進まない。そんな中、大家が撲殺された。捜査本部が立ち、音道は以前コンビを組んだことがあるベテラン刑事・滝沢保と再び組むことに。刑事としての音道の勘は一見関係のなさそうな二つの事件を結びつけ、やがて信じられない善意の第三者へと導かれる。


『凍える牙』で初登場した音道貴子と滝沢保の名コンビ。(中略)本作は、久々に旧交を温めた(笑)二人が、互いに牽制しつつも同じターゲットに立ち向かう、待望の長編小説である。と表紙の裏側にあるとおり、久々の音道・滝沢モノです。もうファンとしてはキター!という感じでございます。今作では、音道は恋人に起きた重大な出来事に悩み、滝沢は若干丸くなっていて、体調に不安があったりとそれぞれ変化がありつつも、相変わらずお互いを心の中では全てとは言わないまでも認め合ってるくせに、強情っぱりでぎこちない関係しか築けないというこの不器用さがたまりません。決してモエス!ではないけど。
犯人あて小説ではないのですが、犯人を特定してからの展開はちょっと強引だなという感じ。実際の捜査はそういうものなのかもしれませんが、物証を見つけた過程が偶然ってのは小説的にはうーむ・・・と思ってしまう。一つの物語としては、ちょっと消化不良。
シリーズとしては音道としても滝沢としても、ターニングポイントとなる物語になるんじゃないかな。次が楽しみです。