冲方 丁/文芸アシスタント『シュヴァリエ』

シュヴァリエ

シュヴァリエ

時は18世紀。ルイ15世の絶対君主制を誇るフランスで未来の約束を誓いあった姉と弟。時が過ぎ、約束のその日、姉リアは連続「淑女」失踪事件の最新の被害者となった。弟デオンは姉の行方を追おうとするが、詩人にしてガーゴイルという異形の者がデオンの前に立ちふさがる。ルイ15世の特命大使として活動することを許されたデオンは、従者のロビンと共に事件の黒幕である“我らが父”と名乗る人物を追い、パリからナポリを経てヴァチカンへと向かう。


BLOOD+が終わってしまった今、あまり多くない私の脳内アニメ用キャパシティの7割がシュヴァリエで占められております。絵はさほど好きなタイプではないのですが、世界観とゴシック風の雰囲気がなかなかお好み。これでソロモンとハジぐらい素敵キャラが出てくれれば諸手を挙げてシュヴァリエ大好きーて言えるんだけどな。
というわけで、表紙絵に辟易しながら読みました。アニメの内容とは大分違います。デオンとロビンの関係はアニメと近いものがあるけど、リアの生死の設定は違うし、四銃士も出てきません。そもそも同じような世界観とデオンとリアの姉弟という設定以外はそれぞれの媒体(アニメ・漫画・小説)に合った内容にするというプロジェクトだそうで、漫画は未読なのでわかりませんが、小説においてはアニメのような壮大さはないもののアナグラムが重要な要素となっていて、なるほど媒体に合わせるってのはこういうことかとちょっと感心しました。ただ舞台が舞台だけにフランス語なのは仕方ないというか当たり前なんだけど、アナグラムに全くついていけなくて、小説の世界に入り込めるかと言うと全く無理!でした。
アニメは結構面白いし、冲方丁だからこそ小説まで手を伸ばしてみたのですが、アニメが頭にあるからかもしれないけど、さほど登場人物が動くわけでもなく、風景や小道具が浮かんでくるような想像したくなるような、そんな描写があるわけでもなく、企画の一環としてならアリだけど、単品としてはダメかな・・・というレベルでちょっとガッカリしたのですが、どうやらこれは“文芸アシスタント”の人達が書いたもののようで、それならまぁ納得かなと。想像するに、シノプシス冲方丁が書き、文芸アシスタントが肉付けして作品に仕上げたのかなと思うわけですが、それが成功したとは言えないかなぁ・・・という感じ。絵は一種の技術だと思うけど、言葉はそう簡単に人と共有できるようなものではないと思うので。