米澤 穂信『ボトルネック』

ボトルネック

ボトルネック

恋した彼女を弔うため、ようやく東尋坊の地に立つ覚悟ができた僕は、彼女が落ちたその場所で強い眩暈に襲われ崖下に落ちた・・・・・・はずだったのに、気がつくと見慣れた金沢の街中にある公園のベンチにいた。不可解な思いを抱えつつ兄の葬儀の準備の為に自宅へ戻ると、そこには存在するはずのない「姉」がいた。混乱しながらも「姉」と話を摺り寄せる僕。どうやらここは僕が産まれなかった世界ということらしい。


あちこちで絶賛と言っていいほどの評判を目にするので、かなりの期待を持って読みましたが、私これダメだ。徹頭徹尾主人公のリョウを追い込むだけの物語で、そのどうしようもないまでのやりきれなさはむしろ好きなタイプの作品だと言えるんだけど、自分の心の傷をグリグリと弄くりまわす痛々しさが白々しいというか、ホラ、痛いでしょ?痛がってる自分って可愛いよね、と押し付けられてるようで、イヤだった。最後の最後であの内容のメールが届くラストは結構衝撃だったし、後味の悪さも結構なもんだと思ったけど、そこまで延々と鬱々した物語を読まされてきたってのに、めんどくさいからじゃんけんで決めちゃおう的な強引さと適当さを感じた。例えが下手だな、私。
その瞬間は共有したような気になったりするけど、結局、自分の痛みは自分だけのものだと思う。