田中 啓文『ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2』

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

落語はめちゃめちゃ上手いアル中噺家の笑酔亭梅寿の元へ無理やり弟子入りさせられた、笑酔亭梅駆ことトサカ頭の竜二による青春落語ミステリー第二弾。


いやー、これシリーズ化して欲しいと思ってたのでほんと嬉しい。1作目の単行本とは段違いで装丁が豪華!表紙をめくって「おぉー!スゲー!」と思わず声が出ました。さぞかし前作の評判が良かった(=売れた)のだろう。なんだか私も嬉しいです。ホクホク。
前作よりもミステリー度は低め。というより謎解きは謎解きなんだけど、ミステリー的な謎じゃなくて、ちょっとした疑問レベルだな。それよりも、落語に愛を感じ始めてる竜二が東京の噺家の落語に触れたりテレビタレントや若手漫才師など笑いというジャンルは共通してるけど全く違う土壌で勝負してる芸人と接したり、落語以外の仕事をしたりすることによって、壁にぶつかって落ち込んだり、落語における“粋”とは何か悩んだり、落語の面白さをいかに広めようかと日々精進しそして成長していく青春物語になってます。それから師弟愛。相変わらず梅寿師匠はいいキャラだわ。ほんっと滅茶苦茶な人で、そんな師匠をボロックソに言う人も大勢いるんだけど、そんな師匠に対してブレることなくちゃんと弟子をやってる竜二の精神面の成長が頼もしい。
1話1話の噺と話とのリンクっぷりは前作の方が上だと思う。というか、落語はド素人な私でも前作の方は知ってる噺が多かったせいかな。今回に至っては全部知らない噺なので、正直ピンとこない部分はありました。くそー、知ってたらもっと楽しめるだろうに。最後の1篇がちょっとご都合展開すぎかなーとは思いましたが、でも全て読み終わった後に感じるホッコリとした気分は、なんかちょっと幸せ。続編思いっきり期待します。


余談なのですが、「猿後家」の中で出てきた

芸人は、ゲン(縁起)を担ぐやろ。スルゆう言葉は『擦る』に通じるさかい、『当たる』に言いかえるんや。スルメはアタリメ、すり鉢はあたり鉢、すり鉦はあたり鉦・・・・・・楽屋の忌み言葉みたいなもんやな

梅寿師匠のセリフなんですけど、私恥ずかしながらスルメとアタリメは別モンだと思ってました。こんな語源?だったとは、ちょっと驚き。