『魔界転生』@新橋演舞場

金会員の人にチケ取りをお願いし、2列目ほぼセンターという良席でナリ様をガッツリ見てまいりました・・・・・・と言いたいところなんだけど、ごめんなさいナリ様、わたしナリ様を見にいったはずなのに、内田滋さん&山崎雄介さんのオットコマエコンビにすっかり心奪われてしまいました。や、ナリ様も見たわよ!2列目なのに双眼鏡で化粧栄えしまくりのお美しいお顔をガン見したわよ!でも思い出すのはあの2人の爽やかなやられっぷりなのです。


ネタバレ含みます。






原作は未読、ジュリーの映画も未見、話をなーんとなくぼーんやり知ってる程度のあたしでしたが、すんなり理解できました。ていうかそもそもそんなに大層な話じゃないですよね、これ。この世に未練、それも四郎以外は思いっきり自己愛でしかない未練を残し転生した魔界衆と十兵衛を筆頭とする真っ当なる剣士たちが戦い、正義が勝つ!と、まぁそれだけの話。
で、そんな単純な話にどういう色をつけるのかがポイントになるわけですが、今回のこの舞台は“まっすぐ”とか“シンプル”とか、そんな感じでした。これは良悪どっちの面もあって、いい面としてはそのまっすぐさのおかげで原作を知らないあたしのような客でも充分ついていけるような解りやすい舞台になっていたと思うということ。悪い面としては話の筋をシンプルに追いすぎるせいで、各人物に血が通いきっていないというか、特に魔界衆の妖しさだったり凄さだったりエゴだったりが伝わってこなくて、平面というか紙芝居みたいというか、○○さんはこの世に未練があったので魔界のモノになりました(紙を捲って次の画面で)ババーン!いきなり対決!みたいな、理解はできるけど、そこに空間はない・・・そんな感じでした。ここらへんはやっぱり原作を読んでたり、登場人物の知識がそれなりにあればまた違う感想を持てたと思うんだけど。
で、この物語の見所の一つが「殺陣」なのですが、これもまた良悪両面というかねぇ、中途半端だった。ハッシーが主役で新橋演舞場でとなれば、歌舞伎風の演出になるのは当然だと言えるし、それを期待してたところも少なからずあった。ああいう殺陣に附け打ちさんのあの音を入れるのは思ったよりも全然悪くなかった。悪くなかったんだけど、それに合ってたのがハッシーとそのお弟子さんだけでして、周りの動きとの差がありすぎて、ダントツに上手いのにかえってそれで浮いてしまってた。歌舞伎風のこの“風”っぷりが突き抜けきってなかった。特に宮本武蔵と対決する前の場面。盆廻しを使いまくって斬っても斬ってもワラワラと現れる根来衆ってのは迫力があって良かったんだけど、動きが単調すぎて飽きた。それは斬るほうも斬られるほうも。どうせならもっと歌舞伎っぽくしちゃったほうがメリハリがあってよかったんじゃないかと思う。それか、逆に新感線バリにスピーディな殺陣にしちゃうか。ていうかね、見ながらちょっとだけ「これ新感線で見たいな・・・」と思ってしまったのですよ。だってさ、四郎=SHIROHでしょ、田尻さんに山本亨さんでしょ、ちょこちょこと新感線を彷彿とさせる要素があるんだもん。こういうメッタ斬りというか、おららららぁぁ〜!的な殺陣はやっぱスピード命でしょ。・・・って新感線が特別なのかもしれないけど。しかもこれ演出がG2さんだからねぇ、もうちょっとこう画期的なものをというか“らしさ”を見せてくれるんじゃないかと結構期待してた部分があったので、その真っ当なエンターテイメント時代劇っぷりに「んー、なんか普通?」と思ってしまった。


以下、お目当てキャストについて。

まずはナリ様。幕が開くと妖しげなライティングの中で蠢く大勢の人々。その中心にいるのは転生前の天草四郎。人間時代(へんな言い方)の天草四郎の姿をみせてくれるのはこのオープニングの群舞の中でのみなのですが、これがもうものっそい完璧なる美少年!パンフにも載ってる肖像画そのものってぐらいおもいっきり天草四郎でいきなり度肝抜かれました。そらあのナリ様ですから、ビジュアル的に嵌るのは当然といえば当然のレベルなわけですが、チラシやなんかで目にするのは転生後の四郎ばかりで、その美しさは言ってしまえば予想の範疇なんだけど、この時のお姿は予想を超えたね。似合うとは思ってたけどさ、これほどまでに完璧なる四郎の容姿を見せてくださるとは、さすがナリ様恐るべし。この人間四郎のお姿は冒頭のほんのちょっとの時間だけなので、ナリ様目当ての女子はぜーーーーーーーーーーーーったいに遅刻しちゃダメですよ。
転生してからの四郎様(これぞ様付けですよ)は文句なしの美貌でございました。転生した魔界のモノたちは女の身体から再生するのですが、転生後の四郎様初お目見えシーンは上半身 ハ★ダ★カ でございます。ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンちょうちょうちょうちょう綺麗。蜘蛛の巣状の赤いミミズばれ(気持ち悪い表現ですいません・・・)みたいな紋様が半身を覆っているのですが、これがまためっさお似合い。最近の若い男って無駄に身体鍛えてたりするじゃないですか。無駄にゴツかったり。でもナリ様は上腕二頭筋あたりはそれなりに男っぽいんだけど、胸からお腹にかけてはすべすべとした少年のようなお身体でして、グヘグヘグヘグヘ(以下延々と)でございます。そしてウェディングドレスのごとき長い裾の宣教師風詰襟の衣装をひらっひらさせながら妖艶に微笑む四郎様・・・。ちょ、目の上のグラデーションどうなってんの!?ちょいボルドー入ってる赤い口紅にーあーいーすーぎー!!とまぁ完璧なるメイクを施されてまして、なんかもう女としては笑うしかねーなみたいなね。大納言様と転生前の但馬守が会話をしてるシーンで、四郎様は柱に寄りかかって大して興味ないわーと言わんばかりにアンニュイな雰囲気で佇んでらっしゃるのですが、この時の表情とかまじ魔性。男でも女でもなく人間でもないそういう妖しさがオーラのごとく出てた。しかもね、四郎様ったらちょっとオカマっぽいんだよ、口調とか仕草とか手つきが。も、もちろん演技なんだけど、それがまぁ自然なわけですよ・・・・・・。アハハーですよ。もうね、ナリ様はやれるまでこの役をやり続ければいいと思う。正直声とか潰れかかってて聞き苦しいところが何度かあったし、相変わらず滑舌もよろしくなかったのだけど、そういうマイナス要素をねじ伏せるような、それを補って余りある妖艶っぷりだったもの。この滲み出る艶感はナリ様しか出せんだろ。まぁちょっとあずみ(映画)の美女丸を思い浮かべましたけどね。
ぶつかる相手が橋之助さんを始めとして芸達者な役者さんばかりなので、やっぱり演技そのものはまだまだまだまだなのだけど、それでも四郎の最期はかなりよかったと思う。島原の民の想いを背負い魔界衆を引っ張ってきた四郎であったが、死を目前にした四郎に縋り付く民達の目に希望はなく、民たちの為という大義名分を失った四郎の絶望が痛いほど伝わってきた。こういうのナリ様上手いよな。“自分のキャラクターと合ってるんじゃないか”と言うだけあって、乗り移られちゃってるみたいだった。あたしナリ様がカーテンコールで見せる超絶笑顔が大好きで、それを見るためにナリ様の舞台を見ると言っても過言ではなかったりするわけなのですが、今回は笑顔もなく茫然自失といった感じで、それだけ入魂してるということで、それはいいことなのだけど、でもちょっとエェェェエ!?そんなぁぁぁ・・・だったのですよ。そしたらね、多分知り合いの人がいたんだと思うのだけど、それまで放心状態というかポーーーーーーーっとした顔でいたナリ様が、その人に気付いて「おっ?」って感じでホワッと笑ったのですよ。フンギャァァァァァァテラカワエェェェェェ!俺が笑いかけられたわけじゃないのに、めっさ満足。知り合いの人ありがとう!その日に見に来てくれてありがとう!やっぱナリ様最高ッス。


この企画を長年温めてきたというだけあって、ハッシーはとても楽しそうにやってらっしゃいました。かなり回数をこなしたせいもあるだろうけど、なんだか余裕を感じました。最初に書いたように中途半端な歌舞伎っぷりだったもんで、動きやなんかが馴染みきらない部分はあったけど、ハッシーの持つ飄々とした空気は、特に描写がなくても弟子たちが先生!と命を賭けて慕うだけの包容力があった。包容力と言えばですね、今からすごいこと書きます。ハッシー顔でかいよね・・・。これまでも決して小さいとは思ってなかったけど、それでもそれほど気にならなかったのに、今回ナリ様とか女性陣とか結構華奢な人と絡んでたせいもあるだろうけどさ、群を抜いてブッチギリ顔デカかったです・・・。まぁ顔のデカさと包容力が比例するわけではないですが。


柳生衆の皆さんはかなり豪華なキャストなのに、もったいない使い方してるなーとつくづく思った。ほんとアッサリ殺されちゃうんだもんなぁ・・・。個性を発揮できる場がほとんどないなか、それでもちゃんとそれぞれのポジションが分かりました。十兵衛が一人ひとりの名前を呼び俺に命をくれるか!と問いかけ、それに七人衆が斜め一列になってもちろんです!と答えるシーンは戦隊ヒーローっぽくてちょっと痺れました。そんな七人衆の中で一際キラキラと輝いていたのが北条主税役の内田滋さんでございました。他の人たちがどっちかというとワイルド系の中、一人坊ちゃんぽいというかね、末っ子ポジションというかね、一際純粋ぽいの。時代劇ヅラも思いのほかお似合いで、基本的に七人衆って同時に舞台にごちゃごちゃと立ってることが多くて、ついでに根来衆もワラワラいることが多いもんで、埋もれがちなんだけど、ジャニーズのコンサートで培った動体視力(どれほど大量の人間が舞台上にいようが目当てをすぐ探せる)が役に立ちました。エヘヘー。そして小屋小三郎役の山崎雄介さん。これがもうめっけもんでして、前に「あいのうた」というドラマにナリ様の抱き合わせでご出演してたときにチェック入れたオトコマエなのですが、いやいやこの人舞台栄えするわ。背がスラッと高いせいもあるんだけど、佇まいというか立ち姿のバランスがいいの。声も結構いい声だったし、イマドキのオトコマエかと思ってたのにナマで見たらむしろ日本男児風のお顔だったのにはちょっと驚いた。今後猛烈チェックしようと思います。


それにしても、演舞城以来久々に新橋演舞場に行きましたが、ホームみたいな気分になった自分がちょっとイヤでした。