- 作者: 鏑木蓮
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/08/10
- メディア: 単行本
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第52回江戸川乱歩賞受賞作。現在に起きた殺人事件と並行して60年前のシベリア収容所で起きた殺人事件をも紐解こうとする物語なのですが、この手の物語は時間軸がごちゃごちゃしがちなのに、これはすごくスッキリしていて分かり易かった。それに加えて高津が書いた句集という形で描かれる60年前の暮らしが淡々と描かれているのに圧倒的な力があって、引き込まれました。気温が低すぎて鼻が凍ってしまい、熱にあたった途端に鼻がもげたとか想像してみようとしても想像できない。それがさほど珍しいことでもないと言わんばかりの冷静な書きっぷりが恐ろしい。
何十年も前の事件が現在の事件の引き金となっているというのはよくありますが、それを解く鍵となるのが俳句だというところが面白い。そっち方面に疎い私としては、俳句を読み解くというだけでなんだか高尚なものを読んでいる気分でした。ただ、俳号を推理するキッカケがやや強引なのと、それを断定するだけの説得力に欠けるかなという気がしました。まぁこれも私が無知なだけかもしれませんが。
綾辻氏と真保氏が選評で書いているように、現代の事件の展開にはさほど魅力がなかったというか、出版社サイドはいいとして刑事サイドに動きが乏しく、句集を読み解くという同じような作業をしてるので、テンポが悪いかなという気がした。せっかく二つの軸があるのだから、事件に対して協力しつつも別のアプローチを取ってくれたほうがもっとドラマティックだったかな、と思った。