大山 誠一郎『仮面幻双曲』

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)

昭和二十二年十一月二十日。東京で探偵業を営む川宮兄妹は、千円もの大金を手付金とする依頼を受け、琵琶湖畔の町を訪れた。依頼人は紡績会社を営む占部文彦。依頼内容は文彦の双子の弟、武彦が文彦の命を狙っているので、護衛してほしいというものだった。川宮兄妹は文彦の部屋の前で寝ずの番ををするが、文彦は敢無く殺されてしまう。文彦の叔母、貴和子に懇願され事件を調査することになった川宮兄妹だが、続いて事件が起きる。整形手術、アリバイ、血液型・・・一見不可能に思える殺人事件の謎に、若き川宮兄妹が挑む。


エェェェェ!?ちょっと待ってちょっと待ってよく解らない(暫し考えて)・・・なるほどねーとビックリして納得。双子とくれば入れ替わりはお約束だし登場人物がそれほど多くないので目を付けた人が犯人だったわけですが、まさかこんな凝りまくったトリックだとは思わなかった。 二卵性双生児の場合血液型が違うこともある ってことを知らなかった時点で見抜けるわけがありません。全編これ伏線と言っていいほど張り巡らされた伏線が見事に回収される様は気持ちよかった。ちょっと展開が強引というか、東京で簡単に必要な情報を収集できてしまうあたりが都合よすぎではありますが、概ね納得そして満足。なんと言っても時代設定が絶妙です。横溝風な雰囲気は素敵だし、 胃の内容物だけで死亡推定時刻を断定しちゃう(死後硬直や死斑には全く触れない)とか、生首と手首をくっつけた案山子と五体満足な死体は重さからして同じ場所に同じ形で落ちなくないか? とかちょっと引っ掛るところはあるんだけど、まぁあの時代の田舎じゃそんなもんかなとギリギリ思える。
読み終わってタイトルの「幻双」に感心。