- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/21
- メディア: 単行本
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帯の「火村シリーズ4年ぶりの最新長編にして、初の孤島もの!」この「孤島もの!」+ハードカバー、そしてアリスの前口上“あまりにも奇妙で、異常で(中略)眩暈を伴う奇態な事件”“幾多の犯罪の捜査に加わり、常軌を逸した事件をいくつも見てきた”アリスですら“あそこで暴かれた真相ほど常識はずれなものは、にわかには思い出せない”にまんまと釣られてしまいました。アリス大袈裟だよアリス・・・。
これまでの作家アリスシリーズとは異なる作風に驚き、そして違和感を感じました。火村のキャラが明らかに変わってるし、文も詩的というか自分に酔ってるというか、なんかいつもと違う感じがした。有栖川有栖に求めてるものはこういうものではないんだけどな。いつもより遙かに多めの薀蓄は単なる薀蓄でしかなくて、読み飛ばしてもなんら問題ないぐらいだし、文量の割りには肝心の部分が薄らぼんやりしてる感じ。殺人事件そのものよりも興味の対象はこの集まりの目的、この島の秘密は何なのか?ということなのですが、アリスの前口上を考えるとそれはそれはもうどれほどの驚愕なのかとドキドキしたのに・・・・・・ふーんってなもんでガッカリ。しかもそこまで引っ張った上にあれほどムキになってこの集まりの目的を暴かなくたって、犯人を指摘することは可能だったと思うんだよなぁ。あんなに芝居がかった火村先生なんて火村先生じゃないやい。何?なんで握手なんか求めちゃってんの?そんな火村先生は嫌だ。で、犯人の予想は見事に外れたもんでこの人が犯人!?ってちょっとビックリしたのに、動機がもう適当もいいとこで、なにその2時間ドラマレベルの動機はってちょっと呆れちゃったし。事件そのものは見立てでもなくダイイングメッセージが残されているわけでもなく、至ってシンプルな普通の五体満足な死体なのだから、せめて動機ぐらいはもうちょっと凝ってくれよと。あとがきを読むとこの物語のスタートは島の秘密を思いついたことだそうなので、動機は二の次なのかもしれないけど、それならば島の秘密をちゃんと事件と絡ませてくれよと。
・・・とまぁあまりよろしくない感想ですが、だからと言って面白くなかったわけでもないんだよなぁ・・・。立てた小指で唇をなぞる火村先生(とそれを見つめるアリスの図)に会えれば(読めれば)それだけで結構満足してる私がいる。ダメだ、こんなことじゃダメだ私。