小路 幸也『東京バンドワゴン』

東京バンドワゴン (1)

東京バンドワゴン (1)

明治から続く下町の古本屋「東京バンドワゴン」。経営するのは<文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決>を家訓とする御歳79歳の勘一を筆頭に4世代が仲良く暮らす堀田家。ちょっと不思議な出来事も家族総出で解決に導く。ご近所さんや常連客が訪れ今日も騒がしい堀田家のラブ&ピースな日々。


最後のページに「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。」というメッセージがありまして、これが全てを言い表してます。ほんと昔あったような大家族のほのぼのホームコメディそのもの。多分“寺内貫太郎一家”とか“時間ですよ”とかそこいらへんのドラマを想像すれば間違いないんじゃないかという気がする。キッパリ言い切れないのはちゃんと見たことがないからなわけですが・・・ま、イメージそういう感じということで。
面白いのはあの頃(昭和?)ではなく時代設定は現代で、頑固だけど実は話が分かるお爺ちゃんは定番でいいとして、その息子(60歳)は金髪&長髪の現役ロックミュージシャン、長女は未婚の母、長男はフリーライター、愛人の子供ながら分け隔てなく育てられたプレイボーイの次男と、昭和時代では考えられない設定だというところ。でもやってることは昭和なの。そのバリバリ作り物感がいい意味でドラマ的なありえなさを感じさせてくれました。衝撃的な出来事が起こるわけでもないし新たな発見があるわけでもない、言ってしまえばなんの盛り上がりもない予定調和な物語なのですが、ぼーっとぬるま湯につかってるような気持ちよさがある。気分がギスギスしたときに読むといいかもしれませんが、人恋しくて寂しい時に読んじゃ駄目。余計寂しくなるかもしれないから。