真保 裕一『栄光なき凱旋』

栄光なき凱旋 上

栄光なき凱旋 上

栄光なき凱旋 下

栄光なき凱旋 下

一人の女性を愛したジローとヘンリー、白人の恋人と結婚したいマット。アメリカの日系人社会で暮らす彼らの未来を真珠湾攻撃がぶち壊した。犯した罪から逃れるためジローは卓越した日本語力を見込まれ陸軍情報部へ、ヘンリーは理不尽な差別に抗議するため法廷の場へ、マットは愛する家族、愛する人を守る為に友たちと銃を手に取る決意をする。立ちふさがる人種差別の壁。アメリカで生まれ育った彼らはアメリカ人の誇りを胸に戦場へと向かう。第二次世界大戦を生き抜く若者を描く青春群像大作。


見方が違えば戦争という行為の意味や印象が違って見える。当たり前といえば当たり前なんだけど、私が好んで(心をグリグリ抉られながらですが)読む古処誠二さんが描く第二次世界大戦と照らしあわせながら読んだので、改めてそう思った。

物語の世界に入れるまでに相当なページ数が必要でした。特に上巻は何度挫折しようと思ったことか・・・。いかにも真保先生な熱くてストレートなエピソードがちりばめられてはいるのですが、それが第二次世界大戦という史実と馴染まないというか思いっきりフィクションなところが真保先生の魅力なのに、時代背景を思うとそのフィクション具合になかなか酔えなかったのです。
マットを中心とするハワイチームのやりとりを読んでいて「バンドオブブラザース」を思い出したのですが、同じ戦争中の友情を描いていてもこの物語の若者たちとは湿度が違うし、当然日本の若者とも違う。これが国民性ってやつなんだろうな。