貫井 徳郎『愚行録』

愚行録

閑静な住宅街で起きた一家惨殺事件。殺された家族について人々が証言するエピソードから浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。

「慟哭」ほどではないけれど、この結末というか結末寸前、これはこの人の告白だったのか！と判った時のビックリ具合は相当なもんです。そしてビックリしたあと注意深く読んでれば見抜けたのにー！キィィー悔しい！！という気分。
とにかく全編嫌味のオンパレードでして、ムカムカしまくり。しかもそれが証言者が変わるごとにパワーアップするわけですよ。女性の証言の方が多いのですが、その語り口が稚拙というか全然自然じゃないところがまた腹立たしい。でもそこがまた微妙な男目線が入ってるというか、見栄やら媚びやら女特有のイヤな感情が零れてるようで、ニコニコ笑いながら出されたお茶が生ぬるかったみたいな、中途半端な嫌がらせされてるような気がした。これが例えば桐野夏生であったならば、きっとイヤイヤながらも共感しまくりで、仕方ないじゃない、だって女なんだもんって開きなおることもできるんだけど。

そしてなんといっても一番のオチは貫井さんのプロフィールなわけですが。